排出許可証取引制度の理論的側面について考察する.制度設計上の論点について理論分析を通してクリアにすることを意図し,この制度の可能性と限界,利点と問題点を公正な視点で分析することを主眼とするものである.
初等的な経済理論によれば,環境税,補助金,排出許可証取引制度は最適に設計されていれば,すべて経済効果として同等であり,その選択や組み合わせは本質的に権利初期割当ての問題であるといえる.こうした認識を基本として,制度設計上の論点を考える.それらは,情報の非対称性,「権利」の定義,市場支配力の影響,時点間の取引,不確実性などである.