2011 年 4 巻 1 号 p. 32-40
現在,日本国内では,地球温暖化防止に向けてさまざまな対策が実施・検討されている.しかしながら,その対策が十分でない部門もある.運輸部門はそのうちの1つで,エネルギー消費量の大半を占める乗用車に対する対策が遅れていた.近年,乗用車の省エネルギー化(以下,省エネ化)を進めるための政策や税制度の整備が進んでいる.ところが,省エネ化は,リバウンド効果と呼ばれる経済現象を引き起こし,本来節約されるべきガソリン消費量の一部を相殺してしまう可能性がある.本稿では,リバウンド効果の大きさをマイクロパネルデータに基づき計測を行った.推定の結果,日本の乗用車部門には,約18%のリバウンド効果が発生しており,さらにこれ以上になる可能性もあることが示された.これより,何らかの対策をとらないと,乗用車の省エネルギー政策の有効性は,本来目標としていた値を下回る可能性もあることが明らかになった.