リハビリテーションと応用行動分析学
Online ISSN : 2759-2588
Print ISSN : 1884-2658
無発語自閉スペクトラム症児に対する言語発達を目的とした応用行動分析学的介入
-呼名に対する振り向き行動への介入-
川村 立
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2023 年 10 巻 p. 9-13

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抄録

無発語自閉スペクトラム症児を経験した.A児は,共同注意や指差し等の前言語伝達行動が獲得されていなかった.また,自己刺激行動が顕著であり,言語聴覚士の指示に反応することは無かった.自己刺激行動を抑制すると癇癪に繋がってしまい,壁に向かって頭を打ち付ける等の危険行動が観察された.そこで,2歳7か月の時点から応用行動分析学に基づく介入を導入した.初回評価時の新版K式発達検査の結果,言語-社会の発達指数は29,発達年齢は276日であった.初期の介入(5セッション,週1回,30‐40分)では,逆模倣を行った.結果,A児がSTに対して注視する時間が増加し,アイコンタクトが可能となった.次いで,呼名刺激に対する振り向き行動の定着を目的とした介入を行った(8セッション,2週1回,15‐20分).介入前,呼名による振り向き行動の出現率は0%であった.シャボン玉を用いることで言語聴覚士の呼名に対する反応性が改善したことから,シャボン玉を呼名に対提示して振り向き行動を出現させた.その後,呼名による振り向き行動の出現回数を測定した.その結果,7・8セッションでは,シャボン玉を用いない条件で振り向き行動の出現率は80%に到達した.4歳7か月時点の再評価では,言語-社会の発達指数は74,発達年齢は1,248日であり,キャッチアップ傾向を認めた.自閉スペクトラム症児に対する応用行動分析学的介入の有効性が確認できた.

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© 2023 リハビリテーションのための応用行動分析学研究会
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