抄録
今回,自己刺激行動を認める無発語自閉スペクトラム症男児1例を経験した.A児は常に紙破りを行っており,中断を求められることで激しい癇癪に繋がっていた.言語聴覚士は,問題行動のアセスメントや言語行動への介入を目的に応用行動分析学を参考にしてA児への介入を実施した.しかし,新型コロナウイルスの影響により継続した来院が困難となった.そこで,幼稚園の保育士と連携し,自己刺激行動を高次化する取り組みを言語聴覚士から提案した.その結果,自己刺激行動は代替行動分化強化により他者から認められる行動へと変化し,卒園前の最後の発表会においても保育士と協働で作成した作品が劇の背景として飾られ,問題行動を社会的意義の高い行動へ移行する手続きに成功した.症例に直接評価・訓練を施す機会に恵まれなくとも,言語聴覚士が応用行動分析学を用いることや他職種と連携を行い,多様なニーズに応える支援体制が重要と思われた.