2024 年 2 巻 1 号 p. 19-22
【目的】積雪寒冷地の冬期路面は転倒リスクが高く,転倒を機に要介護者となる事例も多い.凍結路面での転倒予防には全足接地歩行が重要であるが,歩行速度が低下するため,一般的には路面の滑りやすさを目視で判別し,危険と判断した場合以外は通常歩行を選択する.この判断を誤り,全足接地歩行を行うべき路面で通常歩行を行った場合に転倒リスクが増大する.本研究は,カメラで撮影された数歩先の路面画像から滑りやすさをAIで判別し,危険度をユーザに事前警告して全足接地歩行を促すことにより転倒を予防するシステムの開発が目標である.本報告の目的は,冬期路面画像から滑りやすさの判別を行い,その判別精度について検討することである.【方法】路面画像466枚に対し,滑りやすさに応じてレベル0(乾燥・湿潤)~3(極めて滑りやすい)のラベル付けを行い,数歩先の視野角を切り出した画像データセット12,670枚を用いて学習ならびに判別精度の評価を行う.【結果】積雪凍結路面と乾燥・湿潤路面の判別では平均正解率0.988が得られたが,積雪凍結路面間の判別(レベル1~3)を含んだ平均正解率は0.617となった.【結論】積雪凍結路面と乾燥・湿潤路面の判別では高い精度が得られたが,積雪凍結路面間の判別では実用的な判別精度が得られなかった.原因として学習用データの画像数の不足が考えられ,より多様な路面画像の収集が課題である.