2024 年 2 巻 1 号 p. 23-27
背景:地方公立病院が直面する課題は,少子高齢化と人口減少による医療資源の不足だけではない.医療の質向上と働き方改革という新たなニーズも加わり,これまでの体制では対応が困難になっている.そんな中,医療デジタルトランスフォーメーション(DX)が,地域医療の未来を切り開く鍵として注目されている.目的:鴨川市立国保病院では,亀田総合病院から2年間出向した医師と理学療法士とともに地域包括ケアシステムの確立を目指した医療DX化を推進した.本研究では,その道のりと成果を報告する.取り組み:Donabedianモデルに基づき,医療の質を「構造」「過程」「結果」の3側面から評価し,質指標(QI)を可視化するためのダッシュボードをExcelのプログラミングで作成.患者満足度,転倒・転落防止,褥瘡予防,病床稼働率といった重要指標をもとに,病院全体の状況をリアルタイムで把握し,多職種が連携してデータに基づく意思決定を進めた.展望:今後はダッシュボードを活用し,国保病院と地域医療機関とのデータ連携をさらに深化させ,患者が住み慣れた地域で一貫した医療と介護を受けられる地域包括ケアシステムの構築を目指す.また,DX化を通じて得た知見を活かし持続可能で質の高い“共に診る”地域医療を実現するためにさらなる可能性を追求する.