本稿では,自閉症スペクトラム(ASD)や知的障害児・者の表情理解能力の向上を目指した研究の現状を概観し,筆者が考える,その課題について論述した。課題の1つは,より微妙な表情の学習が可能になる,動画を活用した学習プログラムを開発することの重要性である。また,表情学習に動画を用いることが,ASD児・者の課題である感情表現への支援方法の1つになり得る可能性があり,そのことについて,さらに検討する必要性について論じた。さらに,先行研究の多くは,学習前後に評価課題を実施しているが,日常生活場面への行動の般化の検討は十分に行われておらず,表情学習の効果を日常生活場面でどのようにして評価するのかという問題について述べた。そして,ASDや知的障害児・者の表情理解能力を高めると同時に,これら3つの課題の探求も目的とする教育・研究用の表情学習プログラムを,現在開発中であることを述べ,その概要について紹介した。