宗教と社会
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論文
明治10年代以降の墓地法制と都市―札幌にみる墓制の近代―
問芝 志保
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2016 年 22 巻 p. 1-15

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抄録

本稿は近代化や都市化という大きな文脈のなかで墓制の変容を捉える試みである。明治初年における神葬祭奨励策は早々に終息し、明治10年代以降、政府の主眼は都市における近代的な墓地整備へと切り替わった。この近代墓制は都市社会の現場でいかに具体化したのか。本研究は近代化の先進地域といえる明治期札幌を事例に、行政資料や新聞記事等に基づき墓制の成立と展開を明らかにする。開拓初期札幌は住民の流動性が高く、墓地は荒れ多くの無縁墓が生み出されていた。政府はこれを問題視し、定住促進のため共葬墓地を建設した。明治中期になり移住民の生活が向上すると、中流以上の人々が衛生的で西洋的な墓地を積極的に受容し、無縁墓の撤去など墓地管理への意識を高め、自らの成功を顕示するために高さ数mにもなる巨大な墓を建てた。こうして、近代化をあるべき姿として受け取った人々が、先祖祭祀の中核としての近代墓制の定着・普及に寄与したと考えられる。

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