宗教と社会
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産業化による人口移動と墓祭祀の変容 : 鹿児島県大浦町調査より
井上 治代
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2001 年 7 巻 p. 47-70

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抄録

本論文は、戦後の産業化による若年層の地域移動によって起こった親子の「別居」が、墓祭祀にどのような変化をもたらしたかについて、親子「別居」率の高い鹿児島県大浦町の調査結果から考察する。大浦町では高度経済成長期の若年層の流出に伴って土葬墓から納骨堂へ移行した。さらに1980年代後半から転出者が支払う墓の掃除免除金に滞納者が出始め、90年代に使用権が返還される墓も出現した。また転出者が墓の祭祀や管理を依頼している地元代理人も、高齢の親戚や息子の配偶者の親戚、さらには全くの他人と、代理人の確保も困難になりつつある状況がうかがわれた。これらは、流出当時の若年層が自分の墓地をどこにするか決着をつける年齢になった1990年代に、故郷ではなく自分の生活圏に墓を建てる人が多ければ、そこに放郷の墓石から見た一つの継承断絶が起こりうるという筆者の仮説を裏付けるものである。

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