本研究の目的は、節内に主格要素をもつ非文法的な付帯状況ナガラ節を含む文を刺激とした場合に得られる事象関連電位を測定し、それがナガラ節における主格要素の出現制限に対しどのような含意をもつかを検討することである。実験の結果、非文法的な付帯状況ナガラ節に対しては統語的逸脱が惹起するとされるP600成分が現れたため、付帯状況ナガラ節の主格要素の出現制限は統語的な制限であるという分析が支持される。ただし、P600成分は対応する文法的なナガラ節文が刺激文として示される群でのみ現れ、対応する文法的な刺激文が提示されない群では現れなかった。電位量についても、有意差が得られたのは対応する刺激文間のみであった。このことから、文法的な対の刺激文を提示した方が、非文法的な刺激文の統語的逸脱が把握しやすくなり、P600効果が積極的に得られることが確認できた。