実験音声学・言語学研究
Online ISSN : 1883-6763
研究ノート
文字種による文の認知処理速度の差異
日本語テクストの難易尺度構築のための基礎研究
柴崎 秀子
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2010 年 2 巻 p. 18-31

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抄録

本研究では文正誤判断課題実験を行い、日本語テクストの平仮名表記と漢字表記の読み易さについて検討した。漢字を1)漢字検定8級と9級(小学2年生と3年生の配当漢字)、2)漢字検定4級、3)漢字検定準1級の3つのレベルに分けて、それぞれの漢字からなる語彙を含む288の文を作った。32名の成人の日本語母語話者を2つのグループに分け、同一の刺激語を漢字と平仮名による表記の違いで2つのリストを作成し、それが別々の被験者に当たるようにカウンターバランスを取った。その結果、肯定反応・否定反応のいずれにおいても、1)は平仮名表記が漢字表記よりも反応時間がかかり、逆に、3)は漢字表記が平仮名表記よりも反応時間がかかった。このことから、成人の日本語母語話者の場合、準1級などの難しい漢字は読みにくいが、漢字検定8級・9級程度の漢字語彙であれば平仮名よりも漢字で表記されたほうが読みやすいということが示唆された。

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