2017 年 9 巻 p. 55-63
本研究では、北海道道南方言の入りわたり鼻音に先行される子音[mb]、[nd]、[ŋg]の生起について調査を行った。先行研究によると、これらは道南方言を特徴付けるものだが、衰退している特徴であるとも言及される。このことを確認するために、老年世代の3 名の調査協力者の音声を録音し、入りわたり鼻音を探索した。その結果、3 種すべての実例が確認できた。また同一環境において入りわたり鼻音が無い例も観察され、さらに生起頻度も後者の方が大きかった。一方、今回の調査では、魚種名に見られる入りわたり鼻音は必ず発音されており、特定の表現においては未だ確固たる存在であることが示された。