実験音声学・言語学研究
Online ISSN : 1883-6763
特集論文
「パピルス・アボット」における完了sḏm=f形の接尾表記について
ボトムアップ型の言語記述を目指して
永井 正勝
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2017 年 9 巻 p. 75-90

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抄録

新エジプト語の神官文字写本「パピルス・アボット」(BM10221)を対象に、完了sḏm=f形の動詞に付加される表記形式の分析を行った。その結果、強動詞には接尾表記.wが現れる動詞(ḏd, pḥ, sẖ⫖)と現れない動詞(rḫ, ỉṯ⫖, sḏm, sỉp, wḥm)があること、弱動詞には接尾表記.yが現れる動詞(⫖wỉ, th)と現れない動詞(gmỉ, ỉn)があること、不規則動詞には接尾表記.wが現れる強動詞タイプの動詞(rdỉ)と、接尾表記.y/.wy/.wyが現れる弱動詞タイプの動詞(ỉrỉ)があることが判明した。従来、強動詞、弱動詞、不規則動詞はそれぞれ1つの動詞クラスとして認定されていたが、それぞれのクラス内での細区分が可能であることが示唆された。

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