2019 年 18 巻 3 号 p. 246-253
本稿では、国交省の補助事業である⾼齢者・障害者・⼦育て世帯居住安定化推進事業の⾼齢者を対象にした事例を対象とした。研究の視点として、低廉性の確保、地域との接点をもてるコミュニティづくり、重度化対応のためのケア確保の3点を据え、住み慣れた地域内で住み続けるために、⾼齢者向け住宅に必要な建築計画の知⾒を次の通り提⽰した。低廉性の確保においては、中古不動産の活⽤であり、中でも今後統廃合で余剰が出ることが予想される⼩学校をはじめとする地域に散在する公的空間ストックを活かして、より利⽤しやすい価格の住宅整備に繋げることである。コミュニティづくりにおいては、空間構成では空間構成の多様性や、居住者どうしの接点が⽣まれる動線計画、住宅内外から利⽤可能な併設施設などが挙げられた。いずれにしても⼊居者に繋がりの選択肢を数多く⽤意することで、要介護状態でも⾃⽴時に近い社会性の維持や構築が可能になると考える。ケア確保を物理的な近接性も踏まえて検討した。重度化しても住宅内に限らず、隣地や近接地に訪問してくれる事業所の⽴地があることで、外部確保という形も含めてケア確保できていることが重要である。