都市計画報告集
Online ISSN : 2436-4460
防風石垣が残る山間集落の形態的特徴に関する調査研究
和歌山県田辺市本宮町土河屋を事例として
向 理沙落合 知帆
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2021 年 19 巻 4 号 p. 426-430

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抄録

和歌山県田辺市本宮町土河屋は果無山脈のふもとの傾斜地に集落を形成しており、東側を熊野川が大きく蛇行して流れている。果無山脈から吹き降ろす北からの「果無おろし」が特に強く、大半の民家が防風のための石垣をもつ。昭和初期まで住民のほとんどが筏師で民家は山の街道沿いと川沿いに分かれて分布しており、現在公民館や寺社が集められている集落の中腹は風が強いためにほとんどが畑であった。しかし、昭和28年に紀州大水害が起こり、川沿いの多くの民家が被害を受けた。川沿いの住民は土河屋を離れるか、土河屋内のより高い土地に移住した。また水害を契機に熊野川沿いでダム開発が促進され、道路網も整備されたことで筏師は廃業となり街道沿いの住民は少し低い土地に移住した。こうして現在の土河屋集落が形成された。また、防風石垣は風の強いと言われる北面に最も多く、石垣の高さの平均値は街道寄り、川寄り、中腹の順に高かった。よって街道沿いの石垣が最も古く、高く積む技術があり、中腹は風が最も強いが民家が新しいために軽度の防備で耐え得たと推測できる。さらに屋根の上に石や金網を載せる防風対策や、石垣に加えて風雨を凌ぐためのオダレも見られた。

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