本稿の目的は、社会の価値観の変化に対応した新しい価値をまちづくりに見出すことである。(シリーズ第4稿)本研究では、水俣において子どもたちにふるさとを作る「いなか学校」の実践者にインタビュー調査を行い、新たな価値の抽出と言語化を試みた結果、6つのまちづくりの新たな価値が同定された。「いなか学校」においては、実践者個人の経験や繋がりが社会化さることで、子どもたちが、農山漁村地域の自然や社会に根差した体験を通じてふるさとを作り、地方のまちに誇りをもたらし、公害で分断したまちの回復に寄与した。核家族世帯として都市に住みながら、祖父母世代を含む3世代の繋がりでふるさとの価値を継承することは、子どもたちが土地に根ずくことを学び、持続可能なまちづくりに貢献する可能性を示している。