モンゴルの首都ウランバートルでは、一極集中によるゲル地区の無秩序な宅地開発が進行し、災害脆弱性が懸念されている中、異常気象による洪水発生で、水害問題が深刻化している。そこで、本研究は、ウランバートルにおける水害の発生要因を解析し、遊牧民の伝統知識を現代都市に反映させることで、ゲル地区の住環境問題を解決する糸口を探ることを目的とする。実際に発生した洪水被害を現地調査およびメディア報道から収集し、GISとGoogleマップを用いて地理的要因を分析した。その結果、流失しやすい表土、傾斜地への宅地造成、排水計画の不備、谷底の街区形成、緑地減少が要因であることが判明した。また、オボーは水害リスクの低い高台に位置し、避難場所として有効であると示唆された。今後は、雨水を吸収する場の設置を考慮した都市整備や、オボーのような高台にある公共空間の維持が求められる。