2024 年 23 巻 1 号 p. 11-
人口減少、高齢化を背景とした世帯の小規模化は、空き家の発生と新設住宅の建設を同時並行で推し進め、住宅循環の停滞を引き起こしている。本研究では、高齢単独世帯の増加が空き家の発生要因となる一方で、中年単独世帯に対する住宅ストックの不足が、新設住宅建設につながることを推察した。東京都世田谷区では、高齢単独世帯の多くが保有する築古の木造一戸建住宅が、質的な問題から中年単独世帯の住宅需要に合致せず、新設住宅建設を推し進める一つの要因になっている。和歌山市中心部では、経済成長期に子育て世帯のために建てられた一戸建住宅が、築年数、広さ、間取りなどの要因から中高年単独世帯のニーズに合わず、住宅ストックの再利用が進まないため、空き家の増加を助長している。こうした住宅循環の停滞は、両地域においてコンパクトなまちづくりを阻害する要因となっていることが明らかとなった。