2009 年 8 巻 1 号 p. 38-41
本研究では,和歌山県田辺市の沿岸部の3地区を対象として、自主防災組織の活動状況とその地域の歴史および社会的背景を整理した。その結果、同じ沿岸部に形成された近隣の集落であっても、歴史的および社会的背景等によって形成された地域特性によって防災に対する取り組みが大きく異なっていることを明らかにした。その上で、特に防災活動が行われていない1地区についてヒアリング調査を実施し、自主防災組織を通じた防災活動が行われていない地区でも、日常生活の中で密な近隣関係の形成、被災経験の伝承、祭りなどの伝統的行事や習慣によって形成される“地域のつながり“等の“地域力”が潜在することを明らかにした。さらに、“地域力”は、自然災害に関する意識を高め、災害時におけるスムーズな対応を可能とする要素を含んでいることが示した。