2025 年 42 巻 2 号 p. 191-196
70歳代男性、市中肺炎で入院し第2病日に重症急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)で気管挿管となった。圧規定換気にてΔ吸気圧4cmH2O、PEEP 10cmH2OとしたがP/F比 71と低値であった。精査のため胸部X線動態撮影(dynamic chest radiography:DCR)を実施した。DCRでは吸気終末に対して呼気終末で浸潤影の範囲拡大と濃度上昇を認めた。また肺野の呼吸性濃度変化であるピクセル値の呼吸性変動率(Δpixel value%)を解析すると、右下肺野外側が17.2%と最も高く、呼気終末に気管支透亮像を伴う浸潤影が出現していた。一方、吸気終末は気管支透亮像が軽減しており、tidal recruitmentと考えた。酸素化改善と人工呼吸器関連肺傷害(ventilator-induced lung injury:VILI)リスク軽減のため腹臥位療法を行い、第3病日はP/F比 273、呼気終末の浸潤影も範囲縮小と濃度低下を認めた。右下肺野外側のΔpixel value%は9.8%に低下、呼気終末の気管支透亮像も消失し、tidal recruitmentは軽減したと考えた。DCRは動的病態であるtidal recruitmentの推測・VILI回避に役立つ可能性がある。