Review of Polarography
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リン酸イオンの溶媒抽出ポーラログラフィー
神原 富民林謙 次郎神谷 義紀
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1964 年 12 巻 3 号 p. 71-75

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抄録
 ポーラログラフによるリン酸イオンの間接定量は, 既にUhl(1)その他(2)-(4)によってなされている,その方法は,リン酸イオンを含む水溶液に濃度既知の過剰Mo(VI)イオンを加え,リンモリブデン酸錯体を生成させ,沈澱除去後,水溶液中に残ったMo(VI)イオンをボーラログラブィーで定量し,Mo(VI)イオンの二減少量からリン酸でオン濃度を求めるのである.これらの方法は,直流ポーラログラフ法によるものであり,定量感度や不純物による影響,定量時間などの点で,比色あるいは吸光光度法による定量法に比較して劣っている. 本研究は,これらの欠点を除くために,リン酸イオンをリンモリブデン酸錯体としてメチル・イソブチルケトン、(MIBK)中に抽出し,その(MIBK)に電解質水溶液(2NHClO4,2N LiClなど,Table 1参照)とメチルセロソルブ(MCS)とを加え,単一相とし,その液を直接ポーラログラフ電解液として,その中のMo(VI)イオンをAGボーラログラフ法で定量し,間接的にリン酸イオンを定量する方法について検討した. クロロホルム-塩酸-メチルセロソルブの三元混合液ポーラログラフ電解液とした例は,先に藤永らによって報告されているが,MIBK-電解質水溶液- MCS(体積比で4:5:11,:Fig.1の0点)の単一三元混合液もまた,ポーラログラフ電解液として使用可能である(Fig.4参照).この液に於けるMo(VI)イオンのポーラログラムはFig.2-3に示す通りである.図から明らかなように,Mo(VI)イオンの直流ポーラログラムは、だらだらとした不明瞭な波であるのに反して,交流ピークは極めて理想的な波形を示す. 支持電解質として,ClO4-,PO43-,NO4-,SO42-などを用いた場合は,3っの交流ピークを生ずるが,Cl-イオンを含む塩を用いると,その濃度により,1つまたは2つの波が消える. これらいずれの波高も,水相中のリン酸イオンの絶対量ときれいな直線関係がある(Fig.5-.7).従って,この三元混合溶液を用いて,PO43-イオンの間接定量が可能である
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© 日本ポーラログラフ学会
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