Review of Polarography
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ファラダイック整流作用によるアセトフェノンの電極反応に関する研究
伊藤 勝清
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1968 年 15 巻 4-5 号 p. 97-101

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抄録
 DossとAgarwa1によって発見されたフアラダイク整流作用を利用してアセトフェノンの電極反応の解析を試みた。装置はbarkerらによって考案された,整流電圧を矩形波ポーラログラフ法の矩形波振幅として利用する方法をとる柳本高周波ポープログラフPF509型である。 この装置によってアセトフェノンのポーラログラムを測定すると,図2に示したように,矩形波ポーラログラムはpHの増大とともに負電位に移行するがその波形はほとんど変化しない。他方高周波ポーラログラムはpHの増大ととも正の整流効果が減少し負の整流効果が増す。この原因は,電極反応のもっとも単純な系O+ne〓Rに対するBarkerの報告によると,転移系数の水素イオン濃度依存性が非常に大きいものと考えうるが,アセトフェノンの酸性溶液中の電極反応を単純な電極反応系として考えるにはつぎの二点で不可能と思われる。第1は周波数と高周波ポーラログラムの関係について,pH3.00から3.60の間で負の整流電圧は1MC/secのときが0.455MC/qsecのときより大きい。第2は正の整流電圧と負の整流電圧が等しくなる電位はpHに依存しない。そこで整流電圧を矩形波ポーラログラムと高周波ポーラログラムの波高より求めると図4に示すpHに依存しないものであった。 これらの点を説明できる系として,酸性溶液中のアセトフェノンの電極反応をMauanovskuuらの報告から(1)と(2)式で示されるものとした。整流電圧は各々複極剤の電極界面濃度をDelahayらにより求められた化学反応が先行する整流電圧の方程式にあてはめることにより求めた。この時k1/k2≪1とした。この(9)式の特徴は水素イオン濃度が変数として含まれていないことである。この式からpHに依存しない整流電圧第4図は説明できる。また前の2点はpHに依存しない整流電圧を矩形波振幅としたため,そして矩形波ポープログラムがpHの増大とともに負電位に移行すると考えればよい。そうすれば当然pHに対して変化に富んだ高周波ポーラログラムが観察されることになる。 以上よりアセトフェノンの電極反応は(1)と(2)式として考えることができる。そこで(9)式にしたがいα=0.4,D1/2/ka=7×10-3sec1/2,kx≫106sec-1のとき整流電圧を計算した。この結果は図4に示す。
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© 日本ポーラログラフ学会
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