抄録
広島における原爆被災者のうち現在健康なもの51例,白血病などの血液病症状を呈するもの26例の血清を非被災正常者37例のものに対比し,ポーラログラフ的にBrdickaの蛋白波をとつて比較した.蛋白波は生血清反応,変性蛋白反応及び濾液反応の何れについても行なつた.波高はコバルトの拡散電流から第1波及び第2波の平坦部または極大部迄の電流値をとつた。電解液中には血清試料が一定容積濃度入つたものについて各波高比をとるよう試料調整を規正した.但し濾液反応の波高は10倍したものについて他の反応値と比較した.生蛋白反応,変性蛋白反応における第1波,第2波の波高は非被爆健康人,被爆健康人については類似の値を示すが血液患者の値は相対に低い.濾液反応については特定の規則性が認められなかつた.また被爆線量乃至は被爆位置の爆心地よりの距離とポーラログラフ的所見との間にも有意の関係は認められなかつた.なお濾液反応による波高を変性反応によつて除した比即ち蛋白指数と同意義の比率には有意の関係はなかつたが変性反応値を生反応値で除した比には規則性が認められた.即ち第1波の場合は第2波の場合よりも明瞭であり,非被爆正常人はおおむね1.2~1.4の間にその比が分布し,血液患者は1.0~1.25の間に分布する.処が非被爆正常人はこれら両領域にまたがつて分布する,このことは予診的に有意義であるものと考えられる.