Review of Polarography
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Brdicka接触水素波に関する研究 [I] Brdicka接触水素波に関するコバルトの還元波
Hiroshi SUNAHARA
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1961 年 9 巻 4 号 p. 158-164

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抄録
-SH,-S-S-基を含むアミノ酸,ペプタイド,蛋白質は塩化アンモニウムーアンモニヤ性コバルト塩溶液中で1段又は2段の接触水素波を示すが,同時にコバルトの還元電位はいずれも正側電位に移行する.著者は先きにコバルト(III)の第2波の半波電位が,シスチンやオクタポリペプタイド等による正側電位の移行を報告し,更に本論文において,蛋白質のもつ表面活性作用をも考慮にいれて,-S-S-基を有するBovineSerum. Albumine(B.S.A.)-S-S-基を含有しないGelatin(ポーラログラフ的にコバルト塩中では接触水素波をみとめないもの)及び合成非イオン性表面活性物として,Tween 80,LEOをえらび0.1M NH4Cl+0.1M NH3の1mM Co(NH3)6Cl3溶液中に上記物質を加えてコバルト第1,第2波の挙動を観察した. 第1図Aは,LEO, Tween 80の添加によりコバルト第2波極大波高が減少し,同時にコバルト第1波の半波電位の負荷電位への移行がみられ-0.3V. - -0.4V.附近に小さなprewaveがみられた.第1図Bにわいては,B.S.A.の添加によりコバルト第2波極大波高の減少と同時にコバルト第1波の半波電位は負側電位に移行し,-0.1V.附近に小さなprewaveがみられる.その還元波は第2図に示してある.以上の結果により第1波の移行は前記4物質の表面活性作用によるものであるが,コバルト第2波に対する挙動は異なつている.その結果を第3図に示す.Tween 80,LEOによる第2波の半波電位は負側電位に移動し,同じ挙動がGelatinにもみられるに反して,-S-S-基を有するB.S.A.の場合コバルト第2波の半波電位は正側に移行する.以上の結果より第2波極大波高が前記4物質の添加により減少性を示すにもかかわらず,B.S.A.の場合のみは表面活性作用を有し更にそれ自身の有している-S-S-基のコバルトィオンに対する錯化作用の結果Co(H20)62+の還元波よりも正側に還元電位をもつB.S.Aとコバルトとの錯イオンの還元波の生じることが考えられる.又前記4物質の水銀滴えの吸着作用の差異は,それぞれの電気毛管曲線の測定結果第4図にその結果が示してある.図中Aはコバルト塩溶液のみの場合であり,BはB.S.A., CはGelatin, DはLEOの添加の場合である.特にB.S.A.の場合,Gelatinとは異なる曲線を示している.これはB.S.A.のもつ水銀面えの吸着性に加えて更に-S-S-基の作用によるものと推定される.前記したごとく蛋白質及び表面活性剤によるコバルト第1波に対する影響は,添加量の増加にしたがい小さなprewaveが現われ主波が負側電位に移行し添加量が1×10-2%以上になると良好な波形を示す.蛋白質及び表面活性剤の添加量によるコバルト第1波の主波の“αn”の値を求めると第5図に示したごとくなる.添加量1×10-2%以上の増加に対して“αn”の値が増加して1.0の値に近づく傾向が共通性とみられる.この点に関しては表面活性剤のCo(NH3)63+e→Co(NH3)62+の反応を示すコバルト第1波還元過程に対する影響を示すものとして興味あるが,その機構は復雑で明らかでなく本研究においてはB.S.A.,Gelatin, Tween 80,LEOの第1波に対するやや類似的な挙動を報告した.
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© 日本ポーラログラフ学会
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