Review of Polarography
Online ISSN : 1884-7692
Print ISSN : 0034-6691
ISSN-L : 0034-6691
Brdicka接触水素波に関する研究[II]塩化アンモニウムーアソモニヤ性Co(II)又はCo(III)溶液中のリポ酸のポーラログラフィー
砂原 広志
著者情報
ジャーナル フリー

1961 年 9 巻 4 号 p. 165-173

詳細
抄録
 塩化アンモニウムーアンモニヤ性Co(II)又はCo(III)溶液中でBrdicka接触水素波をあたえる化合物中の活性的役割となる種々な基とその構造との関係を考えると、その中心的役割は既知の如く、-SH基又は-S-S-であり、同時に存在する-NH2、-COOH基等の影響も考慮せられる.Brdicka接触水素波をあたえる化合物の殆どは環状構造ではなく、(1)1分子中に-SH又は-S-S-基と-NH2、-COOH基等を含む化合物、(2)1分子中に-SH又は-S-S-基と-NH2基を含む化合物、(3)1分了に-SH又は-S-S-1、と-COON基を含む化合物、(4)1分了中に-SH又は-S-S-基と及び-NH2、-COOH基以外の基を含む化合物に分類できる.しかし上記4群に属する化合物は、Co(II)又はCo(III)中の接触水素波の出現や波形等とそれらの構造との間には未だ理由づけのある規則性はみとめられていない. 著者は1つの-S-S-基と数種の-NH2、又は-COOH基を含み状環構造を形成するOctapolypeptideであるOxytocin、VasopressinがCo(II)及びCo(III)中で多段的接触波を示すことを報告したが本論文においては、-S-S-基を有する5員環化合物で-NH2基がなく、-COOH基を有するリ0酸について、Co(II)又はCo(III)中での還元波につき研究した.まつ、コバルトの存在しない0.1M NH2+0.1M NH4Cl溶液中でのα-リポ酸については第1図に示すごとく、半波電位-0.74V.に主波を示しそのあとに小さな不可逆波が出現する.交流0.-プログラムにおいても主波に相当する波がみられる.リポ酸の濃度変化に対する主波の波高をプロットすると第2図に示すごとく直線、交流ポーラログラム上の波高は直線関係を示さず、リポ酸の-S-S-の水銀滴えの吸着による理象と推定した. 塩化アンモニウムーアンモニヤ性II価コバルト溶液中でのリポ酸の還元波は第3図に示すごとく第1波より第V波までの波が出現する.第III波の波高はリボ酸の濃度変化に対して第4図に示す如くLangmuir等温吸差曲線にしたがいBrdicka接触水素波である. 第l波はリポ酸の-S-S-による水銀滴えの吸着にもとずくものであり、交流ポーラログラムにも第1波に相当する波がみられる.第5図Aに示すごと<、コバルトの存在していない場合のその波高ia(第1波に相当する)よりは、コバルトの存在している場合の第1波波高lbの方が小さく、リポ酸の各濃度におけるその差idに対して第II波波高をプロツトすると直線関係がえられ第5図Bに示してある.II価コバルト共存下でのαリポ酸の吸着波高より、α-リポ酸とコバルトィオンとの錯イオンの形成が考慮せられこの錯イオンの還元波によつて第II波が生.じると推定した. 塩化アンモニウムーアンモニヤ性III価コバルト溶液中でのリポ酸の還元波は第6図に示すごとく第1波より第V波までの波が出現する.第1波はCo(III)→Co(II)の還元波であり、第II波はα-リポ酸の水銀面えの吸着にもとずくもので、交流ポーラログラムにも第II波として出現している.III価コバルト存在下のリポ酸の波高は、III価コバルト存在下の波高と同じく、コバルトの存在しない場合のリポ酸の波高より小さく、第5図A、曲線2で示している.第III波はリボ酸とCo(II)との錯イオンの還元波であり、リボ酸の濃度変化に対してその波高が減少し、第7図に示すごとく、リポ酸とコバルトの比が1:1を示す関係がえられた.第4波はコバルトーリポ酸錯イオンの還元にもとずくものでコバルトのアマルガムまでの還元波であり第V波はリポ酸の濃度増加に対してその波高は第8図に示すごとく直線を示さなかつたが、Langmuir等温吸着曲線にはしたがわなかつた.リポ酸による接触波波高はII価コバルトの場合にくらべてIII価コバルトの場合は約100倍のその濃度が必要でしかも波高は小さく現われている.以上-S-S-基を有する環状構造化合物のリボ酸はCo(II)、Co(III)中でBrdicka接触水素波を示し、特に-S-S-基の水銀滴えの吸着性、コバルトイオンとの錯化性と接触波との関係を報告した
著者関連情報
© 日本ポーラログラフ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top