理学療法学
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脳損傷患者のコミュニケーション障害と理学療法上の考慮点
金井 敏男
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1991 年 18 巻 3 号 p. 210-214

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抄録
コミュニケーションとは, いくつかのものの間に一定した属性の共有を生じさせる作用を指し, ある種の意味や内容が信号を媒介として, 個体から個体に伝達されるプロセスであると池内は定義している。人間においては, 意思や意図を伝達したり受け取ったりする場合, 話す, 聞く, 読む, 書くなどの高度に発達した言語という象徴的信号システムによって, 成し得るものであると一般的には理解されているように思われる。しかし, 脳損傷患者の治療場面において, 指示を聞くことや自分の意思を伝えることができるにもかかわらず, 指示を守れなかったり, 忘れたり, 集中できないなどによって, 治療の遂行に支障をきたすばかりか, ADL自立に至らないケースを経験することもある。このようなケースでは, 言語的コミュニケーションが成立していても, 真の意思交流に問題があり, それが課題の遂行や ADLの目的行動にまで影響を及ぼしていると推測される。したがって, 真の意思交流や環境への適応性を妨げる要因として, 内面的活動すなわち非言語的精神機能のかかわりも無視するわけにはいかない問題である。
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© 1991 公益社団法人 日本理学療法士協会
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