抄録
股関節疾患患者の跛行の原因として考えられる疼痛と脚長差以外の因子について検討した。34例の股関節疾患患者を前額面で観察される跛行の程度によって4群に分け,各群について股関節の外転筋力,可動域,X線像の評価を行った。跛行の出現から進行期にかけては,大腿骨頭の上外方移動が増加し(p < 0.05),さらに末期的な進行をみる場合には,外転筋力が低下した(p < 0.05)。股関節可動域は,伸展を除き,正常歩行に必要とされる可動域を満たすなど,跛行の出現,増悪の主要な因子であるとは考えられなかった。股関節疾患患者の前額面で観察される跛行には,外転筋力に加え,大腿骨頭の上外方移動の程度が大きく影響を及ぼすものと考えられる。