抄録
本研究の目的は,健常成人男性9名に対する一側下肢への作為的な脚長差による歩行が,歩行諸因子,特に歩行効率の指標である生理的コスト指数(Physiological Cost Index:以下PCI)に及ぼす影響と靴補高の必要性について検討することである。運動課題は,0〜4cmの5種類の脚長差を施した条件下での「快適歩行速度」と「最大歩行速度」の2種類である。分析項目は,PCI,運動時心拍数と安静時心拍数の差,歩行速度,ストライド長,歩行率である。結果,歩行速度,ストライド長,歩行率は,2種類の速度条件ともに4cmまでの脚長差ならば有意差はなかった。しかし,快適歩行速度時に,PCIは脚長差4cmと0cm,4cmと1cmとの間に,心拍数差は4cmと0cmとの間にそれぞれ有意差が認められた。これらから,脚長差歩行をPCIや心拍数などの身体エネルギー消費の面から検討すると,脚長差が4cmになると靴補高の必要性があると考える。