理学療法学
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1995年度指定研究論文
高齢者における下肢筋力と起居・移動動作能力の関連性
浅川 康吉池添 冬芽羽崎 完黒木 裕士河野 一郎神先 秀人
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1997 年 24 巻 4 号 p. 248-253

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抄録
高齢女性35名(82.1 ± 7.0歳)を対象に,起居・移動動作の自立のために重要な下肢の筋群を同定し,その筋力を検討した。測定した筋群は股関節の屈曲,伸展,内転,外転,膝関節の屈曲,伸展および足関節の底屈,背屈の8つである。各筋群の筋力は徒手保持型マイオメーターで測定した最大等尺性筋力(kg)をトルク体重比(Nm/kg)に換算し,左右両側で平均した値とした。起居・移動動作能力はFunctional Independence Measure(F.I.M)の中から移動(歩行,車椅子),階段,移乗(ベッド,椅子,車椅子),移乗(トイレ),移乗(浴槽,シャワー)の5項目を用いて点数化した。Spearmanの順位相関を用いて各筋群と起居・移動動作能力の相関を分析したところ各筋群とも有意な相関(p< 0.05)を示し,特に足背屈筋群(r= 0.75,p< 0.001)と膝伸展筋群(r= 0.74,p< 0.001)で高い相関を示した。以上の結果より下肢の各筋群は起居・移動動作能力と関連があり,特に足背屈筋群と膝伸展筋群は重要な筋群であると思われた。これらの筋群についてカットオフ分析により起居・移動動作の自立に必要な筋力を検討したところ,足背屈筋群は0.42(Nm/kg),膝伸展筋群は1.43(Nm/kg)が目安となることが示唆された。
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© 1997 公益社団法人 日本理学療法士協会
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