1999 年 26 巻 7 号 p. 289-293
解剖実習用遺体(男性5体,女性5体)10体10膝(右側3膝,左7膝)を対象とし,内側広筋の筋線維角について検討した。前額面における筋線維角の計測は,大腿四頭筋腱膜板に付着する線維で最も近位の点,膝蓋骨に付着する線維で最も近位の点,膝蓋骨に付着する線維で最も遠位の3点とし,比較として外側広筋の筋線維角も計測した。矢状面における筋線維角の計測は,内側広筋および外側広筋が膝蓋骨に付着する線維幅の中点で行った。前額面における内側広筋の筋線維角は,近位から遠位に向かい有意に鈍角であること,また,外側広筋に比べ有意に鈍角であることが示された。矢状面においても,内側広筋は外側広筋に比べ有意に鈍角であった。内側広筋に対する効果的な運動療法の実施には,同じ内側広筋ではあっても部位によりその近線維角に違いがあることを考慮することで,有効かつ適切な膝関節運動を誘導することが可能になると考えられた。