理学療法学
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26 巻, 7 号
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報告
  • 永井 将太, 桜井 宏明, 梶原 敏夫, 小竹 伴照
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 7 号 p. 277-282
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は片麻痺患者の下肢・体幹筋の筋萎縮をCTを用いて経時的に追跡し,各筋の回復傾向を比較することで,同一の回復傾向を示す筋のグループ化を試みることである。対象は当院入院後3か月以上訓練を実施した,脳血管障害による片麻痺患者24名とした。入院時と退院時にCTを用い,麻痺側および健側の傍脊柱筋,中殿筋,大殿筋,大腿四頭筋の%断面積(筋断面積中のCT値30〜120HUを示したピクセルの総面積/筋断面積×100)から筋改善値(退院時%断面積-入院時%断面積)を算出した。因子分析の結果,筋改善値は健側を中心とした第一因子,麻痺側の中殿筋,大殿筋からなる第二因子,健側大殿筋のみの第三因子の3つの因子からなることが明らかとなった。第一因子では,FIM移動項目の改善値と高い相関がみられたのに対し,第二,第三因子では能力障害(歩行速度,ケーデンス,歩行持久力,1日の活動量,FIM移動項目)改善値と相関はみられなかった。これらのことから,第二・第三因子に属する3筋は他の筋に比べ特異的な経過を示すことが示唆された。
  • ―入院時に歩行要介助者を対象として―
    蟻川 小百合, 菅井 芳郎, 平石 恒男, 遠藤 文雄
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 7 号 p. 283-288
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脳卒中患者の歩行の予後予測因子としての,立位保持能力,開眼片脚立位能力および起立能力の有用性を明らかにする事である。対象は,当院入院時点では歩行に介助を要した患者81名(平均年齢63.9 ± 11.43歳)であった。入院時の立位保持能力,開眼片脚立位能力および起立能力と,退院時の歩行能力との関連を,発症からの期間が2ヶ月未満,2ヶ月以上3ヶ月未満,3ヶ月以上の3群に分類して,検討を行った。その結果,自立歩行の獲得が可能なのは,発症から2ヶ月未満では,立位保持能力が30秒以上可能な場合であった。また,3ヶ月未満では,片脚立位能力が両側で可能な場合,あるいは下腿長よりも低い台からの起立が可能な場合であった。発症後3ヶ月以上では,片脚立位能力が両側において可能であり,かつ健側での片脚立位能力が2秒以上保持可能な場合,または下腿長の80%未満の台から起立が可能な場合と考えられた。以上の結果から,入院時に歩行に介助を要する脳卒中患者の場合,入院時に立位保持能力,片脚立位能力あるいは起立能力を測定する事は,自立歩行の獲得の可否を予測する手段として有用であると考えられた。
  • 林 典雄, 立木 敏和, 鵜飼 建志, 禹 誠殊, 青木 隆明, 大嶽 昇弘
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 7 号 p. 289-293
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    解剖実習用遺体(男性5体,女性5体)10体10膝(右側3膝,左7膝)を対象とし,内側広筋の筋線維角について検討した。前額面における筋線維角の計測は,大腿四頭筋腱膜板に付着する線維で最も近位の点,膝蓋骨に付着する線維で最も近位の点,膝蓋骨に付着する線維で最も遠位の3点とし,比較として外側広筋の筋線維角も計測した。矢状面における筋線維角の計測は,内側広筋および外側広筋が膝蓋骨に付着する線維幅の中点で行った。前額面における内側広筋の筋線維角は,近位から遠位に向かい有意に鈍角であること,また,外側広筋に比べ有意に鈍角であることが示された。矢状面においても,内側広筋は外側広筋に比べ有意に鈍角であった。内側広筋に対する効果的な運動療法の実施には,同じ内側広筋ではあっても部位によりその近線維角に違いがあることを考慮することで,有効かつ適切な膝関節運動を誘導することが可能になると考えられた。
  • 坂本 親宣, 濱岡 健
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 7 号 p. 294-297
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    腰仙部神経根障害術後の症例に対する理学療法の治療効果をより正確に評価するために,一側性の腰椎椎間板ヘルニアにより第5腰椎神経根障害を呈する症例40例を対象として,術前の皮膚温低下度の違いによって,術後における筋力回復に要する期間に差があるか検討した。術前および術後2週間隔で,両母趾背側部の皮膚温をサーモグラフィを用いて0.1℃単位で測定し,健常側に対する障害側の皮膚温低下度を評価した。また同時に,障害側足関節背屈ならびに内がえし筋力も評価した。術前の皮膚温低下度が0.5℃から1.0℃までの間であった30例では15例(50.0%)が術後2週で,11例(36.6%)が術後4週で筋力が段階4から段階5に回復し,筋力回復に要した期間の平均は3.4 ± 1.7週であった。一方,術前に皮膚温低下度が1.1℃以上を呈していた10例では1例(10.0%)が術後2週で,3例(30.0%)が術後4週で筋力が段階4から段階5に回復し,筋力回復に要した期間の平均は5.6 ± 2.0週であった。術前に皮膚温低下度が大きい症例の方が筋力の回復に要する期間は有意に長かった。
  • 臼田 滋, 遠藤 文雄, 小林 照美, 関 真由美, 鈴木 庄亮
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 7 号 p. 298-304
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脳卒中患者の主介護者のリソースが介護負担感に及ぼす影響を分析し,介護負担感を軽減するための介入方法を検討することである。在宅脳卒中患者の主介護者を対象に調査を行った。調査方法は自記式質問紙法とし,調査内容は,脳卒中患者のADL能力や介護者の社会的因子,介護状況などと主観的介護負担度である。今回の分析には97名の調査結果を使用し,介護者のリソースの介護負担感に及ぼす影響を,偏相関分析と重回帰分析を用いて分析した。その結果,介護者のリソースとして,職業の有無,健康状態,趣味・娯楽の有無,外出の可否が介護負担感との重要な関連要因であった。また,その関連の程度は介護負担感の側面によって異なっていた。従って,介護負担感を軽減させるためには,介護者のリソースの点からみると,介護者の健康の維持と介護場面からの一次的な解放や余暇活動の導入が重要であることが示唆された。
  • 阿部 長, 丸山 泉, 古田 祐二
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 7 号 p. 305-309
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者に対し,6項目の運動機能検査を6試行ずつ行なわせ,最初に最低及び最高測定値が得られた試行回数及び各試行の実測値を調査した。測定項目は,健側と患側の握力及び膝伸展力,歩行速度,健側片脚起立時間(症例数は20〜33例)であった。これらの結果を基に,各測定項目間の最高測定値出現様式の差異を比較した。その結果,各項目とも複数回測定の妥当性が示唆された。また,最高測定値は,握力や膝伸展力の様に比較的単純な課題及び筋疲労の大きい課題が,歩行速度や健側片脚起立時間に比し,少ない試行回数で計測されると思われた。加えて,各項目で最高測定値を得るまでの最適試行回数は,両側握力では4回,両側膝伸展力では5回と推測された。しかし,歩行速度と健側片脚起立時間では,6回以上の試行が必要と考えられ,最適試行回数を推測するには至らなかった。
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