2001 年 28 巻 1 号 p. 1-8
先行研究によれば,ラットの胸髄が半切されると腰髄レベルでは脊髄交叉性にセロトニン線維が増加し,この影響により歩行運動機能の回復が促進されると考えられている。本研究の目的は,脊髄交叉性のセロトニン線維の増加が半切側下肢を過用させることで影響されるかどうかを免疫組織化学的に検討することである。実験動物は6週齢のウィスター系雄ラットで,胸髄右側を半切した31匹のうち18匹はそのまま回復させ,13匹は半切側下肢を過用させる目的で対側坐骨神経を切断した。結果,半切側の腰髄前角に分布するセロトニン線維は,半切1週後は著名に減少したが,2,3週後には増加・再分布が認められ,これは半切側下肢を過用させた場合が著しかった。したがって,脊髄交叉性のセロトニン線維の増加は,半切側下肢の過用によって促進されると推察される。