理学療法学
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28 巻, 1 号
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原著
  • 中野 治郎, 山田 崇史, 永野 克人, 堤 恵理子, 高木 昭輝, 梶原 博毅, 沖田 実
    原稿種別: 本文
    2001 年28 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    先行研究によれば,ラットの胸髄が半切されると腰髄レベルでは脊髄交叉性にセロトニン線維が増加し,この影響により歩行運動機能の回復が促進されると考えられている。本研究の目的は,脊髄交叉性のセロトニン線維の増加が半切側下肢を過用させることで影響されるかどうかを免疫組織化学的に検討することである。実験動物は6週齢のウィスター系雄ラットで,胸髄右側を半切した31匹のうち18匹はそのまま回復させ,13匹は半切側下肢を過用させる目的で対側坐骨神経を切断した。結果,半切側の腰髄前角に分布するセロトニン線維は,半切1週後は著名に減少したが,2,3週後には増加・再分布が認められ,これは半切側下肢を過用させた場合が著しかった。したがって,脊髄交叉性のセロトニン線維の増加は,半切側下肢の過用によって促進されると推察される。
報告
  • ―健常者を対象とした基礎研究―
    対馬 栄輝
    原稿種別: 本文
    2001 年28 巻1 号 p. 9-13
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    歩行時立脚期に股関節屈曲・伸展が変化する中で,股関節外転筋は骨盤水平位を保持し続けるため,ほぼ一定の筋力を発揮する必要がある。本稿の目的は健常者を対象として股関節屈曲伸展角度を任意に変化させた外転筋力値を測定し,その値は異なるか比較検討することである。対象は健常女性12名(平均年齢20.4 ± 0.5歳)とした。股関節屈曲位0゜,10゜,20゜,40゜(背臥位)と股関節伸展位0゜,10゜(腹臥位)における股関節0゜〜5゜外転位の最大等尺性外転筋力を測定した。これらの角度水準間でTukeyのHSD検定を行った結果,股関節屈曲40゜が他の水準間よりも有意に低い値を示した。股関節屈曲20゜〜伸展10゜の水準間には有意な差は認められなかった。大腿筋膜張筋は股関節屈曲位の外転で働くといわれ,発揮する力は中殿筋の約2分の1といわれる。このことが股関節屈曲40゜外転筋力の小さい原因であったと考えた。また,中殿筋は有効に働かないことも原因として挙げられる。股関節屈曲伸展中間位に近づくにつれ中殿筋の活動が有効に作用し,股関節伸展位では大殿筋(上部線維)の作用も加わるため,一定の筋力を発揮できたと考える。これらの考察の助けとして,今後は筋電図を用いた検討を課題としたい。
  • 佐嶋 義高, 村井 謙蔵, 安藤 恭子, 大谷 茂, 山中 英治
    原稿種別: 本文
    2001 年28 巻1 号 p. 14-19
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    人工膝関節全置換術についてクリティカル・パスを作成し導入した。当院では従来より,早期離床・早期退院を目標に理学療法を実施している。今回クリティカル・パス導入前後で,患者及びスタッフに与えた影響について比較検討を行った。クリティカル・パス導入により,術後から退院までの日数には影響がなかったものの,患者満足の向上,チーム医療の推進などについては好結果が得られた。このことから,更なる継続的な検討と,導入を開始した他の疾患についても積極的に推進していく価値がクリティカル・パスにはあると思われた。
  • ―被検筋の違いによる比較―
    山田 英司, 赤坂 清和, 宮本 賢作, 田中 聡, 江村 武敏
    原稿種別: 本文
    2001 年28 巻1 号 p. 20-24
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    自転車エルゴメータによる漸増運動負荷中に測定した積分筋電値が非直線的に増加する点は運動負荷増大に伴い収縮に参加する運動単位の変化によって出現するといわれる。本研究の目的は積分筋電値が非直線的に増加する点の決定に適した被検筋を検討することである。また,その時点の酸素摂取量(VO2)と換気性作業閾値(VT)との関係より,筋持久力の指標としての妥当性について検討した。対象は健常男性10名とし,自転車エルゴメータによる症候限界性の漸増運動負荷を行い,呼気ガス分析と大腿直筋(RF),外側広筋(VL),腓腹筋外側頭(GC)の表面筋電図の測定を同時に施行した。平均積分値が非直線的に増加する点は時系列にプロットした平均積分値を2本の直線で回帰させ,その交点をIntegrated electromyogram threshold(IEMGT)と定義し,各筋における判別可能なIEMGTの出現数を比較した。また,その時点のVO2とVTとの相関関係について検討した。その結果,IEMGTはRFにおいては10名中9名に認めたが,VLでは1名,GCでは4名にのみ認められた。統計学的検定ではRFにおけるIEMGT時のVO2とVTとの間に有意な相関関係を認めた。IEMGTは筋組成,運動に対する貢献度などの影響を受けると考えられ,IEMGTの決定にはRFを被検筋とすることが適しており,筋持久力の指標となる可能性が示唆された。
短報
  • 深堀 栄一, 中村 仁哉, 沖田 実, 吉村 俊朗, 加藤 克知, 中野 治郎
    原稿種別: 本文
    2001 年28 巻1 号 p. 25-27
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脱神経筋萎縮の進行抑制に持続的筋伸張運動が有効かを検討することである。実験動物は8週齢のWistar系雄ラット18匹で,右坐骨神経を切断後,9匹ずつ伸張群と非伸張群に分けた。伸張群には,脱神経を施した翌日より麻酔下にて非伸縮性のテープを用い1日30分間(週6回),右側のヒラメ筋と長趾伸筋をそれぞれ伸張位に保持し,非伸張群には麻酔のみをかけた。脱神経誤2,3,4週目に両側からヒラメ筋と長趾伸筋を採取し,その凍結折片をATPase染色した。ヒラメ筋のタイプI・II線維,長趾伸筋のタイプII A線維は,脱神経後2,3週目で,長趾伸筋のタイプII B線維は脱神経後2週目で,伸張群の平均筋線維直径が非伸張群のそれに比べ有意に大きく,持続的筋伸張運動による筋萎縮進行の抑制効果を認めた。しかし,両筋ともに脱神経後4週目は,伸張群と非伸張群で平均筋線維直径に有意差はなく,持続的筋伸張運動では,継続して脱神経筋萎縮の進行を抑制することは困難であった。
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