自転車エルゴメータによる漸増運動負荷中に測定した積分筋電値が非直線的に増加する点は運動負荷増大に伴い収縮に参加する運動単位の変化によって出現するといわれる。本研究の目的は積分筋電値が非直線的に増加する点の決定に適した被検筋を検討することである。また,その時点の酸素摂取量(VO
2)と換気性作業閾値(VT)との関係より,筋持久力の指標としての妥当性について検討した。対象は健常男性10名とし,自転車エルゴメータによる症候限界性の漸増運動負荷を行い,呼気ガス分析と大腿直筋(RF),外側広筋(VL),腓腹筋外側頭(GC)の表面筋電図の測定を同時に施行した。平均積分値が非直線的に増加する点は時系列にプロットした平均積分値を2本の直線で回帰させ,その交点をIntegrated electromyogram threshold(IEMGT)と定義し,各筋における判別可能なIEMGTの出現数を比較した。また,その時点のVO
2とVTとの相関関係について検討した。その結果,IEMGTはRFにおいては10名中9名に認めたが,VLでは1名,GCでは4名にのみ認められた。統計学的検定ではRFにおけるIEMGT時のVO
2とVTとの間に有意な相関関係を認めた。IEMGTは筋組成,運動に対する貢献度などの影響を受けると考えられ,IEMGTの決定にはRFを被検筋とすることが適しており,筋持久力の指標となる可能性が示唆された。
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