理学療法学
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シンポジウム「健康の視点」
多様化する世界における 「健康観」 再考
波平 恵美子
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キーワード: 健康観, 障害, 認識体系
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2004 年 31 巻 8 号 p. 461-463

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抄録

WHOの「健康」の特徴 WHOの「健康」の定義はいうまでもなく語句の定義ではなく,世界のあらゆる国と地域の人々の,そして性や年齢や階層の別なくすべての人間のあるべき姿を目標として掲げたものである。しかし,現状では,その目標を達成するには余りにも多くの阻害要因がある。貧困による飢えや劣悪な栄養状態,衛生状態はいまだ多くの地域に見られる。大規模戦争はなくとも,世界中のどこかで地域紛争や民族間の対立による紛争があり,また直接攻撃を受けないまでもテロの恐怖にさらされている社会や犯罪の多発地帯に住む人々は心身に強いストレスを抱えている。一方,政情が安定していて生活水準が高く豊かな国々では,その豊かさを保つための社会的状況や制度が,競争の激しいそして個人の能力や努力が常に問われる状態を生み出し,そのことからくるストレスにさらされることになる。また,豊かな生活は平均余命を延ばす一方で,加齢に伴う障害や慢性疾患に苦しむ人々の増加をもたらし,経済的な豊かさは必ずしもWHOの「健康」目標へ到達するための王道ということにならない。

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© 2004 公益社団法人 日本理学療法士協会
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