理学療法学
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原著
冠動脈バイパス術後の運動時換気亢進
―心肺機能と中枢性化学受容体反射感受性の影響―
高橋 哲也熊丸 めぐみ山田 宏美立石 真純河野 裕治安達 仁金子 達夫谷口 興一奈良 勲
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2005 年 32 巻 5 号 p. 319-325

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抄録
心臓外科手術後の運動時の換気亢進と肺活量や呼吸筋筋力などの呼吸機能,および中枢性化学受容体反射感受性との関連性を明らかにするために,胸骨正中切開術により冠動脈バイパス術を待機的に受けた心疾患患者18例を対象に,手術後に順調に理学療法が経過し,病棟内歩行が自立できた後に心肺運動負荷試験と,呼吸機能検査および,呼吸筋力測定,中枢性化学受容体反射感受性測定試験を行った。運動時換気亢進の指標は,VE/VCO2 slopeとし,VE/VCO2 slopeと呼吸機能関連因子との相互関係を検討した。約2週間の運動療法プログラムの前後で,肺活量や呼吸筋力などの呼吸機能や運動耐容能,VE/VCO2 slope,中枢性化学受容体反射感受性はそれぞれ有意に改善した。VE/VCO2 slopeの改善率は中枢性化学受容体反射感受性の改善率と中程度の正の相関関係を示した。また呼吸性代償点における終末期呼気二酸化炭素濃度(PETCO2)の改善率と強い相関関係を示したが,その他の呼吸機能や呼吸筋機能とは関連性を認めなかった。呼吸性代償点におけるPETCO2は運動時の心拍出量反応を反映していることから,冠動脈バイパス術後患者の運動時換気亢進は,運動中の心拍出量応答の不良に起因する換気血流不均衡によるものの可能性が示された。
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© 2005 公益社団法人 日本理学療法士協会
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