2007 年 34 巻 3 号 p. 74-78
本研究の目的は,立位での前かがみ姿勢で引き上げ運動を行う際に体幹前傾角度の違いが体幹および股関節伸展筋の活動に及ぼす影響を明らかにすることである。対象は19歳から29歳までの健常男性10名(平均年齢 : 23.1歳)とした。導出筋は腹直筋,腹斜筋群,L3,L5レベル脊柱起立筋,広背筋,大殿筋,大腿二頭筋とした。運動課題は体幹前傾30°,45°,60゜にてピークフォースの0%,30%,60%を行うこととした。筋電図の平均積分値は最大随意収縮(Maximal voluntary contraction ; MVC)を基準に正規化した(%MVC)。その結果,すべての筋で,いずれの前傾角度でも負荷が大きいほど%MVCは有意に大きかった。同一負荷では体幹前傾角度が大きいほど脊柱起立筋の%MVCは小さく,広背筋と大腿二頭筋の%MVCは大きかった。これらの結果から,脊柱起立筋活動が減少するような前かがみ姿勢では腰部の受動的な組織の負担は増していると考えられるが,肩関節や股関節伸展筋が活動量を増やして引き上げ運動を行っていることが示唆された。