2010 年 37 巻 1 号 p. 17-21
【目的】本研究の目的は,若年健常者における後方歩行の速度制御の特性を歩行率と歩幅の観点から明らかにすることである。【方法】対象は若年健常者157名(年齢19.4 ± 0.7歳)であり,実験の主旨に関して説明を受けた後に参加した。歩行は前方と後方の2種類,速度条件は普通,速く,遅くの3種類とした。進行方向および速度条件毎の歩行速度,歩幅,歩行率を10 m歩行テストにより求めた。【結果】歩行速度と歩行率の関係では,前方でr = 0.92,後方でr = 0.90と有意な相関があった(p < 0.01)。さらに,回帰直線の傾きが,後方で前方よりも有意に大きかった(p < 0.01)。一方,歩行速度と歩幅の関係では,前方でr = 0.86,後方でr = 0.75と有意な相関があったものの(p < 0.01),回帰直線の傾きの差は有意ではなかった。同じ歩行速度で比較した場合,後方では前方と比較して歩行率が高値で調節され,歩幅は低値となる傾向を示した。【結論】後方の関節運動パターンは前方とは異なると考えられ,後方では特異的な速度制御が為されているものと推察された。