【目的】本研究の目的は,THA術後患者の骨盤アライメントと歩行中の重心移動の関連性を検討することである。【方法】THA術後4週が経過した女性18名と健常女性18名を対象とした。床反力計と3次元動作解析装置を用いて,歩行速度,3方向の重心移動幅,重心移動パターンの非対称性の大きさ,一歩行周期及び体重1 kg・進行距離1 m当りの重心の仕事量(WE
-1)を算出した。また,骨盤のアライメントとして股関節正面のX線画像から骨盤前傾角度を算出した。【結果】WE
-1の値は,THA術後患者では健常群と比較して有意に大きい値を認め,THA群が健常群よりも18.3%大きい値を示した。これは,身体の前進にこれだけ大きい仕事を要したことを意味しており,重心移動からみた歩行効率の低下を認めた。THA術後患者の水平面上における歩行中の重心移動は,非対称性なパターンを呈していた。また,THA術後患者の骨盤前傾角度は,WE
-1の値及び重心移動パターン非対称性の大きさと有意な相関関係を認めた。【結語】THA術後の重心移動からみた歩行能力の改善には,局所の股関節機能とともに骨盤アライメントに着目した評価や介入が必要であることが示唆された。
抄録全体を表示