理学療法学
Online ISSN : 2189-602X
Print ISSN : 0289-3770
ISSN-L : 0289-3770
37 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
研究論文
  • ―股関節最大屈曲位での屈曲方向への加重の影響―
    宇佐 英幸, 竹井 仁, 妹尾 淳史, 乙戸 崇寛, 神谷 晃央, 渡邉 修
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2010/02/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,股関節最大屈曲位での股関節屈曲方向への加重による,骨盤に対する大腿骨の動き(股関節固有角度)と仙腸関節・腰仙関節・腰椎椎間関節の動きへの影響を明らかにすることとした。【方法】健常成人女性10名(平均年齢21.0歳)を対象とし,背臥位・膝関節屈曲位での他動的な一側および両側股関節屈曲運動において,股関節最大屈曲位で30N・60Nを股関節屈曲方向へ加重した時の各関節の動きを,Magnetic Resonance Imaging(MRI)を用いて解析した。【結果】一側股関節屈曲時,加重により股関節固有角度のみ増大した。両側股関節屈曲では,加重による各関節の動きはなかった。【結論】一側股関節屈曲時,加重により股関節屈曲可動域は増大するが,これは股関節固有角度の増加によって生じたと考える。また,両側股関節屈曲時は,加重により股関節屈曲可動域は変化しなかった。
  • 小澤 哲也, 松永 篤彦, 南里 佑太, 忽那 俊樹, 松嶋 真哉, 小林 主献, 逸見 房代, 松沢 良太, 齊藤 正和, 増田 卓
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2010/02/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】維持血液透析(HD)患者は循環器疾患や骨関節疾患を合併していることから,通院が自立していても移動動作に困難さを生じている可能性がある。そこで,本研究はHD患者の自覚的困難さに注目した移動動作評価表(HD患者移動動作評価表)を作成し,その信頼性と妥当性を検討した。【方法】対象は外来通院しているHD患者102例(男性34例,女性68例,年齢65 ± 9歳)とし,臨床的背景因子,運動機能,身体活動量およびHD患者移動動作評価表を調査した。HD患者移動動作評価表は32の移動動作について自覚的困難さに基づいた5段階尺度を用いて調査し,因子分析から因子構造の把握と評価項目を選定した。さらに,因子分析の結果をもとに,HD患者移動動作評価表の信頼性と妥当性を検討した。【結果】因子分析の結果,歩行,階段,基本動作に関する3因子計12項目が選定された。選定された12の評価項目に対するCronbachのα係数と検査 - 再検査間の級内相関係数は0.89以上を示した。さらに,HD患者移動動作評価表の得点と臨床的背景因子,運動機能および身体活動量との間に高い相関が認められた。【結論】HD患者移動動作評価表はHD患者の移動能力の特性を反映し,信頼性,妥当性のある評価表であることが示唆された。
  • 藤澤 宏幸, 吉田 忠義, 小野部 純, 武田 涼子, 有末 伊織, 西澤 哲
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2010/02/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,若年健常者における後方歩行の速度制御の特性を歩行率と歩幅の観点から明らかにすることである。【方法】対象は若年健常者157名(年齢19.4 ± 0.7歳)であり,実験の主旨に関して説明を受けた後に参加した。歩行は前方と後方の2種類,速度条件は普通,速く,遅くの3種類とした。進行方向および速度条件毎の歩行速度,歩幅,歩行率を10 m歩行テストにより求めた。【結果】歩行速度と歩行率の関係では,前方でr = 0.92,後方でr = 0.90と有意な相関があった(p < 0.01)。さらに,回帰直線の傾きが,後方で前方よりも有意に大きかった(p < 0.01)。一方,歩行速度と歩幅の関係では,前方でr = 0.86,後方でr = 0.75と有意な相関があったものの(p < 0.01),回帰直線の傾きの差は有意ではなかった。同じ歩行速度で比較した場合,後方では前方と比較して歩行率が高値で調節され,歩幅は低値となる傾向を示した。【結論】後方の関節運動パターンは前方とは異なると考えられ,後方では特異的な速度制御が為されているものと推察された。
  • ―クロスオーバーデザインを用いた検討―
    大森 圭貢, 鈴木 誠, 堀田 宗文, 長澤 弘, 笹 益雄
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2010/02/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,パーキンソン病患者に対するトレッドミル後進歩行が平地歩行能力に及ぼす即時効果をクロスオーバーデザインによって検証することである。【方法】Hoehn & Yahr分類がⅡとⅢのパーキンソン病患者6名を無作為に「前進歩行開始群」,「後進歩行開始群」に割り付け,トレッドミルでの前進歩行,トレッドミル後進歩行を行った。トレッドミル歩行は傾斜3%を設け,快適歩行速度で5分間実施した。平地歩行能力は10m最大歩行速度と歩数を指標とし,介入前,前進歩行後,後進歩行後に測定した。【結果】最大歩行速度は介入前,トレッドミル前進歩行後に比べて,トレッドミル後進歩行後が有意に速かった。歩数は介入前,トレッドミル前進歩行後,トレッドミル後進歩行後の間で有意差はなかった。【結論】パーキンソン病患者に対するトレッドミル後進歩行は歩幅を小さくすることなく,最大歩行速度は高めることから,平地歩行能力を即時に改善する効果をもち,有用な運動と考えられた。
  • 南角 学, 坪山 直生, 秋山 治彦, 安藝 浩嗣, 中村 孝志
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2010/02/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,THA術後患者の骨盤アライメントと歩行中の重心移動の関連性を検討することである。【方法】THA術後4週が経過した女性18名と健常女性18名を対象とした。床反力計と3次元動作解析装置を用いて,歩行速度,3方向の重心移動幅,重心移動パターンの非対称性の大きさ,一歩行周期及び体重1 kg・進行距離1 m当りの重心の仕事量(WE-1)を算出した。また,骨盤のアライメントとして股関節正面のX線画像から骨盤前傾角度を算出した。【結果】WE-1の値は,THA術後患者では健常群と比較して有意に大きい値を認め,THA群が健常群よりも18.3%大きい値を示した。これは,身体の前進にこれだけ大きい仕事を要したことを意味しており,重心移動からみた歩行効率の低下を認めた。THA術後患者の水平面上における歩行中の重心移動は,非対称性なパターンを呈していた。また,THA術後患者の骨盤前傾角度は,WE-1の値及び重心移動パターン非対称性の大きさと有意な相関関係を認めた。【結語】THA術後の重心移動からみた歩行能力の改善には,局所の股関節機能とともに骨盤アライメントに着目した評価や介入が必要であることが示唆された。
  • ―近赤外分光イメージング装置による検討―
    岩部 達也, 大西 秀明, 久保 雅義, 古川 勝弥, 桐本 光
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2010/02/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】筋疲労課題中における筋力,筋活動および大脳皮質感覚運動野領域の活動の時間的変化を明らかにすることである。【対象および方法】対象は健常男性成人7名とした。筋疲労課題は,最大収縮の50%(50%MVC)での右手指把持300秒間持続と,最大収縮(100%MVC)での右手指把持120秒間持続の2条件とした。両条件において,120秒間の安静の後に課題を遂行し,課題終了後300秒間の安静時間を設けた。安静時および課題遂行中の大脳皮質酸素化ヘモグロビン変化量(⊿oxyHb)を近赤外分光イメージング装置(fNIRS)を用いて計測した。また,把持力および筋電図を併せて記録した。【結果】両条件下において,把持開始後直ちに⊿oxyHbの増加がみられたが,50%MVCでは把持力および筋活動の低下の後に時間をおいて⊿oxyHbの緩やかな減少が認められ,100%MVCでは,把持力および筋活動が低下しているにも関わらず課題終了間近まで⊿oxyHbの増加が認められた。両条件における⊿oxyHbの減衰率は,筋電図の減衰率に比べ少なかった。【結論】負荷量の異なる疲労課題において,筋活動が低下しているにも関わらず,感覚運動野領域の活動は最大収縮条件で増加し続け,最大下収縮条件では増加後に低下することが明らかとなった。
症例研究
  • 水野 公輔, 上出 直人, 平賀 よしみ, 高相 晶士, 福田 倫也
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2010/02/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】鼻腔吸気圧(SNIP)は,測定が単純で理解し易い方法であるが,SNIPをDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)へ適応した研究は極めて少なく,測定値の再現性や妥当性は明らかではない。そこで本研究では,DMD患者におけるSNIPの再現性及び妥当性を検討した。【方法】DMD患者16例を対象にSNIP,最大吸気時口腔内圧,最大呼気時口腔内圧,最大呼気流量,胸郭拡張差を測定し,さらに診療記録より努力肺活量を得た。再現性は級内相関係数(ICC)(1,1)を用いて検討し,妥当性は,SNIPと各項目間の相関係数を算出し検討した。【結果】SNIPは平均34.0 ± 13.6 cmH2Oで,ICCは0.92であった。なお,SNIPは努力肺活量と有意な正の相関を認め,最大吸気時口腔内圧や最大呼気時口腔内圧と相関傾向を認めた。【結論】SNIPは良好な測定再現性を示し,また,他の呼吸機能の指標との関連を示したことから,呼吸筋機能を反映している可能性が示唆された。SNIPを他の呼吸機能の指標と組み合わせて評価することで,より多くの情報を収集できるものと考えた。
実践報告
調査報告
  • 渡辺 敏, 井澤 和大, 平木 幸治, 笠原 酉介, 森尾 裕志, 大宮 一人, 幕内 晴朗
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2010/02/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】大動脈解離および大動脈瘤の急性期リハビリテーションプログラムを,残存解離のない例(真性群),血栓閉塞型解離例(閉塞群),Ulcer-Like Projectionを認める例(ULP群),血栓開存型解離例(開存群)の4群に分類して実施しその有用性を検討した。【方法】大動脈解離および大動脈瘤症例172例(男性131例女性41例)を対象とし,各症例の急性期治療と急性期リハビリテーションプログラム進行状況,および逸脱理由を診療録より後方視的に調査した。急性期リハビリテーションプログラム進行状況はADLが許可されるまでの日数を算出し,完遂率や逸脱率およびその理由を検討した。【結果】離床までの期間は真性群2.9 ± 2.0日,閉塞群4.7 ± 3.0日,ULP群4.5 ± 1.7日,開存群8.8 ± 4.2日であった。トイレ歩行までの期間は真性群4.9 ± 1.5日,閉塞群6.8 ± 3.2日,ULP群9.8 ± 4.0日,開存群13.7 ± 4.2日であった。退院までのリハビリ実施期間は真性群12.8 ± 4.5日,閉塞群15.2 ± 5.9日,ULP群17.3 ± 3.8日,開存群27.2 ± 7.7日であった。各群のプログラム完遂率/逸脱率は真性群86%/14%,閉塞群68%/32%,ULP群71%/29%,開存群52%/48%であった。再解離を認めた症例は真性群0%,閉塞群2%,ULP群7%,開存群11%であった。【結論】プログラムの進行状況は概ね予定通りであり,急性期リハビリテーションプログラムは有用と思われた。
臨床入門講座『根本からわかりやすく学ぶ』
第1シリーズ「ボバースアプローチのこれまで,そしてこれから」
feedback
Top