2012 年 39 巻 3 号 p. 178-185
【目的】歩行中に観測された心拍-運動リズム間の同期現象(Cardiac-Locomotor CouplingまたはCardiac-Locomotor Synchronization:以下,CLS)が心拍リズムと運動リズム間の引きこみによって発生したものか,偶然発生しているように観測されたものかをサロゲータ法を用いて検討した。【方法】対象は健常男性9名とした。対象者はCLSを誘発するため歩行のステップを心電図モニタからのビープ音に合わせてトレッドミル上を歩行した。心電図信号とフットスイッチ信号を用いて,歩行中の位相同期図,位相差ヒストグラムを作成した。さらに測定したデータ(オリジナルデータ)からサロゲートデータを作成し,オリジナルデータと比較した。【結果】9名中7名の対象者でCLSが観測された。CLSが観測された対象者におけるオリジナルデータとサロゲートデータは有意に異なるものであった。これはふたつのリズム間に時間的な依存関係があったことを示唆する。【結論】歩行中に意図的に心拍リズムと運動リズムを近づけることでCLSが発生し,発生したCLSは偶然発生しているように観測されたものではないことが示唆された。