2021 年 48 巻 4 号 p. 362-369
【目的】心不全における軽度認知機能障害(以下,MCI)が理学療法(以下,PT)によるADL 改善効果を制限するかについて検討する。【方法】病前ADL が自立であった心不全患者155 例を,MCI 群108 例と対照群47 例に分け,PT 開始時および退院時の身体機能を比較した。また,重回帰分析で退院時Barthel Index(以下,BI)の関連因子を検討した。【結果】PT 開始時のBI と下肢機能(以下,SPPB)はMCI 群で有意に低値であった。MCI 群の退院時BI は対照群と差がない値まで改善したが,MCI 群のSPPB は退院時も対照群よりも低値であった。MCI 患者の退院時BI の関連因子は退院時SPPB であった。【結論】MCI では非MCI よりも入院時BI が低下するリスクが高いが,PT 実施によるBI 改善効果はMCI の有無にかかわらず同様であることが示された。