2026 年 53 巻 4 号 p. 238-246
【目的】本研究の目的は実績指数算出支援のために回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の退棟時Functional Independence Measure(以下,FIM)運動項目合計点を,入棟時の基本情報とFIMからランダムフォレスト法により予測し,精度を検証することを目的とした。【方法】脳卒中患者304名を対象とした。説明変数を性別,年齢,Body Mass Index,入院前要介護度の有無,発症から入棟までの日数,入棟時FIMの各下位項目,入棟時FIM運動項目合計点,入棟時FIM認知項目合計点,入棟時FIM合計点とし,目的変数を退棟時FIM運動項目合計点として予測モデルを構築した。学習データ213名,テストデータ91名で精度を評価した。【結果】学習データにおける予測精度は決定係数(以下,R2) 0.86,テストデータはR2 0.85であった。【結論】入棟時の基本情報および入院時FIMから,退棟時FIM運動項目合計点を,過学習を抑制しながら高精度に予測できることが示された。
Objective: This study aimed to predict the discharge functional independence measure (FIM) score in patients with stroke in a convalescent rehabilitation ward using random forest based on baseline information and FIM score at admission and validate its accuracy.
Methods: This study included 304 patients with stroke. The explanatory variables were sex, age, body mass index, number of days from onset to admission, and FIM score at admission. The objective variable was the discharge FIM score. Prediction accuracy was evaluated in 213 patients for training and 91 patients for testing.
Results: The prediction accuracy was 0.86 and 0.85 for the training and test data, respectively.
Conclusion: Discharge FIM score can be predicted with high accuracy using baseline information and FIM score at admission, while preventing overfitting.
日本は世界で最も高齢化が進んだ国であり,内閣府によると令和6年10月1日時点での高齢化率は29.3%に達しているとされる1)。高齢化の進行に伴い脳卒中の発症年齢も上昇している。Toyodaら2)は,Japan Stroke Data Bankに登録された183,080名の脳卒中患者を分析し,発症年齢の中央値が脳梗塞で74歳,脳出血で70歳であり,2000年から2019年の20年間で発症年齢が上昇傾向にあることを報告している。高齢脳卒中患者の増加は,脳卒中による片麻痺に加え,認知機能低下3)や整形外科的疾患4),心疾患5)などの併存疾患を伴う可能性を高めている。また併存疾患の存在は,脳卒中リハビリテーションにおいて阻害因子であり,リハビリテーションを複雑化している要因と考えられる。
日本の回復期リハビリテーション病棟では,Functional Independence Measure(以下,FIM)が日常生活動作(Activities of Daily Living:以下,ADL)の評価指標として広く用いられている。平成28年診療報酬改定より,FIM運動項目合計点は入院料を決定する実績指数の算出にも加えられており,回復期リハビリテーション病棟の運営においても重要な指標となっている6)。実績指数は,各患者のFIM運動項目の利得(退棟時FIM運動項目合計点−入棟時FIM運動項目合計点)を,実入棟日数と疾患別の入棟上限日数の比で除して算出される値であり,短い入院期間で大きなFIM改善が得られるほど高値となる。実績指数の算出においては,高齢者(80歳以上)やADLの自立度が極端に高いまたは低い患者,認知機能低下患者を毎月の入棟患者全体の3割を超えない範囲で実績指数の計算対象から除外できる。
しかし,高齢化の進行により80歳以上の患者が増加し,除外対象となる患者が入棟患者の3割を超えるケースが多くなってきている。回復期リハビリテーション病棟協会の調査報告7)では,2024年度の回復期リハビリテーション病棟入院患者の平均年齢は77.5歳であり,85歳以上が3割,75歳以上が6割を超えている現状が示されている。このような状況において,80歳以上の高齢患者にも適用可能なFIM運動項目合計点を予測するモデルの開発は,入棟早期からの実績指数の試算を可能とし,回復期リハビリテーション病棟における組織運営と高齢脳卒中患者へのリハビリテーション計画立案の両面で臨床的に重要であるといえる。
これまで先行研究では脳卒中患者の退院時FIMを予測する手法として,重回帰分析を用いた予測モデルが数多く報告されてきた。徳永ら8)は,国内の代表的な予測式を大規模データに適用し,その外的妥当性を検証している。実測値と予測値の相関は一定以上認められるものの,先行研究モデルの自由度調整済み決定係数(以下,R2)は0.57~0.76程度9–11)にとどまり,個々の症例における精緻な予測には限界がある。さらに,Spiessら12)は,非線形構造を持つモデルでは全平方和の分解が成立しないため,R2は適合度の指標として不適切であると指摘している。したがって,複雑な相互作用を含むリハビリテーションデータに対し,従来の線形モデルによる説明では限界があると考えられる。
こうした従来の線形モデルの限界を克服する手法として,機械学習手法の一つであるランダムフォレスト法が注目されている。同手法の利点としては,高い予測精度や非線形な関係性の捕捉能力,過学習の抑制,さらには変数重要度の算出が可能な点などが挙げられる13)。Liら13)は,複数施設の臨床データを用いた予後予測において,ランダムフォレスト法が他の決定木ベースの手法や一般的な機械学習モデルよりも優れた識別能と校正能を示すことを明らかにしている。特に,個々の施設ではサンプルサイズが不十分で統計的パワーが不足する場合や,施設間でデータに強い異質性が認められる場合であっても,適切なデータ増強技術を組み合わせることで,高い予測精度を維持できることが示されている。このような特徴を持つランダムフォレスト法は,高齢化に伴い併存疾患や回復過程が多様化している現在の回復期リハビリテーション病棟における予後予測においても,極めて有用な手法であると考えられる。
機械学習モデルの臨床応用においては,将来的なアプリケーション実装を見据え,入力変数の簡素化が重要となる。変数が多いほど入力の手間が増え,臨床現場での実用性が低下する。また,回復期リハビリテーション病棟では認知機能低下を有する患者も多く,詳細な神経心理学的評価などが困難な場合がある。
そこで本研究では,回復期リハビリテーション病棟における組織運営と高齢脳卒中患者への適用を目指し,患者の基本情報と入棟時FIMのみから退棟時FIM運動項目合計点を予測するモデルをランダムフォレスト法により構築し,その精度を検証することを目的とした。また,80歳以上と79歳以下の患者における予測精度を比較し,高齢患者への適用可能性を検討した。
対象は,2018年1月から2020年3月までに新さっぽろ脳神経外科病院(以下,当院)の回復期リハビリテーション病棟に1カ月以上入棟していた脳梗塞もしくは脳出血の患者422名とした。本研究では予測モデルの精度の検証を目的としているため,例外的な患者による影響を除くために,除外基準は,①神経疾患(パーキンソン病,多発性硬化症など)の既往歴を有するもの,②精神障害(統合失調症,双極性障害など)の既往歴を有するもの,③脳腫瘍性の既往歴および合併症を有するもの,④入院中に状態悪化(再発,肺炎,心不全増悪など)したもの,⑤失明しているもの,⑥他院入院中に脳卒中を発症したもの,⑦データに欠損値のあるものとした。除外基準を除く分析対象者は304名であった(図1)。

回復期リハビリテーション病棟に1カ月以上入棟した脳卒中患者422名から,除外基準に該当した118名を除外し,304名を解析対象とした.
本研究は既存の診療データを用いた後方視的研究である。電子カルテより以下のデータを取得した。基本情報として,性別,年齢,入棟時のBody Mass Index(以下,BMI),入院前要介護度の有無,発症から入棟までの日数を取得した。FIMについては,入棟時におけるFIMの下位項目(セルフケア6項目:食事,整容,清拭,更衣上半身,更衣下半身,トイレ動作,排泄コントロール2項目:排尿管理,排便管理,移乗3項目:ベッド・椅子・車椅子,トイレ,浴槽・シャワー,移動2項目:歩行・車椅子,階段,コミュニケーション2項目:理解,表出,社会的認知3項目:社会的交流,問題解決,記憶),FIM運動項目合計点(13項目,13–91点),FIM認知項目合計点(5項目,5–35点),FIM合計点(18項目,18–126点)を取得した。目的変数として,退棟時FIM運動項目合計点を取得した。
本研究では,臨床現場での汎用性を重視し,特別な評価を必要としない変数のみを用いた。これは将来的なアプリケーション開発および多施設展開を見据えた設計である。
入棟時のデータは入棟から1週間以内,退院時のデータは退院1週間前のものを用いた。FIMは当院にて研修を受講した作業療法士が採点し,その後理学療法士,言語聴覚士,看護師が確認して最終決定した。このように多職種による合議制を採用することで,評価の信頼性を担保した。
3. 統計解析説明変数を性別,年齢,BMI,入院前要介護度の有無,発症から入棟までの日数,入棟時FIMの各下位項目,入棟時FIM運動項目合計点,入棟時FIM認知項目合計点,入棟時FIM合計点とし,目的変数を退棟時FIM運動項目合計点として,ランダムフォレスト法による予測モデルを構築した。
ランダムフォレスト法は,ブートストラップサンプリングにより生成した複数のサブセットから決定木を構築し,それらの予測結果を統合するアンサンブル学習法である14)。各決定木の構築時には,すべての説明変数ではなくランダムに選択された一部の変数のみを分岐の候補とすることで,決定木間の相関を低減し,モデルの汎化性能を向上させる。
解析対象者304名を,学習データ213名(70%)とテストデータ91名(30%)にランダムに分割した。学習データに対しては,過学習を防止するため3回繰り返し10分割交差検証法を用いてハイパーパラメータのチューニングを行った。チューニング対象のハイパーパラメータは,決定木の数(以下,ntree)と各ノードで分岐の候補となる変数の数(以下,mtry)とした。ntreeは500に固定し,mtryは2から説明変数の総数までの範囲で最適値を探索した(図2)。

ランダムフォレストモデルの構築および評価の手順を示す.層化抽出法により学習データ(n=213, 70%)とテストデータ(n=91, 30%)に分割した.学習データに対し3回繰り返し10分割交差検証法によりハイパーパラメータ(mtry)を最適化し,テストデータで予測精度を評価した.
機械学習手法において最良の予測精度を達成し,過学習を抑制するためには,一般に数百例のサンプルサイズが必要であるとされている15)16)。本研究の対象は304例であり,この推奨基準を満たしている。またRaudysら16)は,複雑な学習アルゴリズムを用いた予測モデルを正確に評価するためには,設計に使用したデータとは独立したテストサンプルによる検証が不可欠であることを指摘している。本研究では,全データを学習用(213名)とテスト用(91名)に分割して評価を行うことで,モデルの汎用性を客観的に検証している。学習用サンプルサイズは説明変数の数(23個)に対して十分な比率を確保しており,Raudysらが提唱する統計的安定性を得るための条件である「複雑な規則における次元数の数倍から9倍以上の標本数」にも適合している。以上のことから,本研究の標本規模は,臨床的に信頼しうる安定した予測モデルを構築する上で十分な規模であると言える。
予測モデルの精度評価には,R2,二乗平均平方根誤差(Root Mean Squared Error:以下,RMSE),平均絶対誤差(Mean Absolute Error:以下,MAE),中央値絶対誤差(Median Absolute Error:以下,MedAE)を用いた。R2は予測値と実測値の相関の程度を示し,1に近いほど予測精度が高いことを意味する。RMSE, MAE, MedAEは予測誤差の大きさを示し,値が小さいほど予測精度が高いことを意味する。
さらに,高齢脳卒中患者への適用可能性を検証するため,実績指数の算出から除外可能な80歳以上と79歳以下の患者における予測精度(R2, RMSE, MAE, MedAE)を算出するとともに,予測値と実測値の差についてBland-Altman分析を行った。Bland-Altman分析では,予測値と実測値の平均値を横軸,差を縦軸にプロットし,系統誤差(固定誤差および比例誤差)の有無を評価した。固定誤差は差の平均値の95%信頼区間が0を含まない場合,比例誤差は差と平均値の相関係数が有意である場合に存在すると判断した。
また,ランダムフォレスト法に用いられた変数重要度の算出を行い,退棟時FIM運動項目合計点の予測に寄与する主要因子を特定した。変数重要度の算出には,Mean Decrease Impurity(以下,MDI)法を用いた。MDI法では,各変数による分岐がもたらす分散の減少量をすべての決定木にわたって累積し,変数の重要度を評価する14)。変数重要度は0–100のスケールに正規化し,最も重要な変数を100として相対的な重要度を示した。
統計解析にはR version 4.2.3を使用した。ランダムフォレスト法にはrandomForestパッケージ(version 4.6-14),交差検証とハイパーパラメータチューニングにはcaretパッケージ(version 6.0-92)を使用した。
4. 倫理的配慮本研究は,データを取得した新さっぽろ脳神経外科病院(承認日:2022年3月7日)および弘前大学大学院倫理委員会(承認番号:2025-008)の承認を得て実施した。後方視的研究であり,対象者への侵襲や介入を伴わないことから,オプトアウトにより同意取得を行った。個人情報の保護に十分配慮し,データは匿名化して解析した。
5. 研究登録・プロトコル・データ利用可能性本研究は解析開始前にUMIN臨床試験登録システムに事前登録した(UMIN000056696:機械学習を用いた脳卒中者の予後予測)。本研究で使用したデータは,個人情報保護の観点から公開していない。解析コードは責任著者への合理的な要求に応じて提供可能である。本研究の計画,実施,報告において,患者・市民の参画はなかった。
学習データとテストデータにおける対象者の基本属性を表1に示す。学習データ213名の年齢の中央値は78歳(四分位範囲:70–84歳),テストデータ91名では79歳(71–85歳)であった。男性の割合は学習データ59%,テストデータ53%であった。入棟時FIM運動項目合計点の中央値は学習データ51点(35–68点),テストデータ49点(26–66点)であった。退棟時FIM運動項目合計点の中央値は学習データ79点(53–88点),テストデータ70点(42–85点)であった。
| 学習データ(n=213) | テストデータ(n=91) | |
|---|---|---|
| 性別,男性(人) | 126 (59) | 48 (53) |
| 年齢(歳) | 78 [70–84] | 79 [71–85] |
| BMI (kg/m2) | 23.0 [20.6–25.3] | 22.1 [20.3–24.8] |
| 入院前要介護度あり(人) | 43 (20) | 32 (35) |
| 発症から入棟までの日数(日) | 22 [18–26] | 22 [18–26] |
| 入棟時FIM | ||
| 食事 | 5 [4–7] | 5 [3–7] |
| 整容 | 5 [4–6] | 4 [3–6] |
| 清拭 | 3 [1–4] | 2 [1–4] |
| 更衣上半身 | 4 [2–5] | 4 [2–5] |
| 更衣下半身 | 4 [2–5] | 3 [2–5] |
| トイレ動作 | 4 [2–5] | 4 [2–5] |
| 排尿管理 | 6 [2–7] | 5 [2–7] |
| 排便管理 | 6 [3–7] | 4 [2–5] |
| ベッド・椅子・車椅子移乗 | 4 [4–6] | 4 [2–5] |
| トイレ移乗 | 4 [3–5] | 4 [2–5] |
| 浴槽・シャワー移乗 | 3 [1–4] | 2 [1–4] |
| 歩行・車椅子 | 4 [1–5] | 1 [1–5] |
| 階段 | 1 [1–4] | 1 [1–3] |
| 運動項目合計点(13–91点) | 51 [35–68] | 49 [26–66] |
| 理解 | 5 [4–7] | 5 [4–7] |
| 表出 | 5 [4–6] | 5 [3–7] |
| 社会的交流 | 6 [4–7] | 5 [3–7] |
| 問題解決 | 4 [2–6] | 4 [1–5] |
| 記憶 | 4 [2–6] | 4 [2–6] |
| 認知項目合計点(5–35点) | 24 [16–31] | 23 [13–30] |
| 合計点(18–126点) | 76 [53–99] | 72 [43–93] |
| 退棟時FIM運動項目合計点(13–91点) | 79 [53–88] | 70 [42–85] |
中央値[四分位範囲],カテゴリ変数はn(%)で表示.
BMI: Body Mass Index, FIM: Functional Independence Measure.
予測モデルの精度を表2に示す。最適なmtryは2であった。学習データにおけるFIM運動項目合計点の予測精度は,R2:0.86, RMSE:8.80, MAE:6.69, MedAE:2.75であった。テストデータでは,R2:0.85, RMSE:9.49, MAE:7.15, MedAE:5.46であった。学習データとテストデータで同等の精度が得られた。年齢層別の予測精度を表3に示す。79歳以下ではR2:0.90, RMSE:6.91, MAE:4.65, MedAE:2.80であった。80歳以上ではR2:0.94, RMSE:6.20, MAE:4.81, MedAE:4.00であり,いずれの年齢層においても高い予測精度が確認された。
| 学習データ(n=213) | テストデータ(n=91) | |
|---|---|---|
| R2 | 0.86 | 0.85 |
| RMSE | 8.80 | 9.49 |
| MAE | 6.69 | 7.15 |
| MedAE | 2.75 | 5.46 |
R2:決定係数,RMSE:二乗平均平方根誤差,MAE:平均絶対誤差,MedAE:中央値絶対誤差.
| 79歳以下(n=175) | 80歳以上(n=129) | |
|---|---|---|
| R2 | 0.90 | 0.94 |
| RMSE | 6.91 | 6.20 |
| MAE | 4.65 | 4.81 |
| MedAE | 2.80 | 4.00 |
R2:決定係数,RMSE:二乗平均平方根誤差,MAE:平均絶対誤差,MedAE:中央値絶対誤差.
年齢群別のBland-Altman分析の結果を図3に示す。79歳以下(175名)では,予測値と実測値の差の平均値は−0.7点(95%信頼区間:−1.8~0.3点)であり,固定誤差は認められなかった。また,差と平均値の相関係数はr=−0.20(p=0.01)であり,軽度の比例誤差を認めた。

A:79歳以下(n=175),B:80歳以上(n=129).横軸は実測値と予測値の平均,縦軸は実測値と予測値の差を示す.青線は差の平均値,赤線は95% 一致限界(平均±1.96SD)を示す.
FIM: Functional Independence Measure.
80歳以上(129名)では,予測値と実測値の差の平均値は1.6点(95%信頼区間:0.5~2.6点)であり,軽度の固定誤差を認めた。これは予測値が実測値と比較してやや小さい値となる傾向を示している。差と平均値の相関係数はr=−0.25(p=0.00)であり,軽度の比例誤差を認めた。両群ともに負の相関を示す軽度の比例誤差を認め,退棟時FIM運動項目合計点が高い患者ほど実測値と予測値の差が小さく,低い患者ほど実測値よりも予測値が小さくなる傾向が確認された。
4. 変数重要度変数重要度の結果を図4に示す。重要度の高い上位5変数は,入棟時FIM合計点(100),入棟時FIM運動項目合計点(80.7),入棟時FIMトイレ動作(73.8),入棟時FIM整容(73.0),入棟時FIM排便管理(68.6)であった。これらの変数は他の変数と比較して予測誤差を大きく減少させた。一方,年齢(18.8),BMI(8.7),性別(0)などの基本情報は相対的に重要度が低かった。

Mean Decrease Impurity法により算出した各説明変数の相対的重要度を示す.最も重要度の高い変数を100として正規化した.上位5変数は入棟時FIM合計点(100),入棟時FIM運動項目合計点(80.7),入棟時FIMトイレ動作(73.8),入棟時FIM整容(73.0),入棟時FIM排便管理(68.6)であった.
FIM: Functional Independence Measure, BMI: Body Mass Index.
本研究では,回復期リハビリテーション病棟に入棟する脳卒中患者を対象に,入棟時の基本情報とFIMから退棟時FIM運動項目合計点を予測するモデルをランダムフォレスト法により構築した。テストデータにおけるR2は0.85であり,高い予測精度を示した。
本邦における重回帰分析を用いて退院時FIMを予測するモデルのR2は0.57~0.76であり9–11),本研究のR2(0.85)は先行研究以上の精度であった。他の領域においても,ランダムフォレスト法によるモデルは線形回帰と比較して高い予測精度を示すことが報告されている。Maら17)は高齢変形性膝関節症患者を対象とした研究において,ランダムフォレスト法のR2(0.687)が線形回帰(0.249~0.286)を大きく上回ることを示した。本研究の結果はこれらの知見と一致しており,FIM運動項目合計点の予測においてもランダムフォレスト法の有用性が確認された。また年齢層別の予測精度についても,79歳以下(R2: 0.90)と80歳以上(R2: 0.94)のいずれにおいても高い予測精度が確認され,80歳以上の高齢患者においても本モデルが適用可能であることが示された。
ランダムフォレスト法が高い予測精度を示した理由として,以下が考えられる。第一に,ランダムフォレスト法は複数の決定木を組み合わせることで,個々の決定木の過学習を抑制し,汎化性能を向上させる14)。本研究でも学習データとテストデータで同等の精度が得られており,過学習が抑制されていることが確認された。第二に,ランダムフォレスト法は変数間の非線形な関係や交互作用を自動的に捉えることができる14)。FIMについては各項目間には関連があることや合計点の改善パターンには非線形性が認められることが報告されている18)。本手法がこのような特性を捉えたことで,予測精度が向上した可能性がある。
ハイパーパラメータチューニングの結果,本研究で最適化されたmtryは2であった。Gilholmら19)は,mtryに小さな値を設定することで,予測力の強い変数に隠れてしまいがちな,関連性が中程度あるいは出現頻度の低い変数が分岐に選択される機会が増え,結果として予測モデル全体の性能が向上することを指摘している。また,ランダムフォレスト法は変数間に相関があるデータのモデリングに優れたアルゴリズムである14)。FIM項目間には相関が認められるが,小さなmtryの選択により各決定木の多様性が確保され,アンサンブル学習による過学習の抑制と汎化性能の向上を両立できたと考えられる。
変数重要度の結果から,入棟時FIM合計点と運動項目合計点が退棟時FIM運動項目合計点の予測に最も寄与することが示された。これは入棟時のADL能力が退棟時のADL能力を強く規定するという先行研究の知見と一致する20)。下位項目ではトイレ動作,整容,排便管理の重要度が高く,これらは複合的な運動機能や認知機能を反映している可能性がある。一方,年齢やBMIなどの基本情報は相対的に重要度が低く,高齢患者であっても入棟時FIMが高ければ退棟時FIMも高くなる可能性があり,年齢のみで予後を判断することは適切でないことが示された。
Bland-Altman分析の結果について考察する。両群で認められた軽度の比例誤差は,ADLレベルが高い患者では予測精度が高く,ADLレベルが低い患者では予測精度がやや低下することを示している。この傾向は,ADLレベルが高い患者ではFIMの改善パターンが比較的均一であるのに対し,ADLレベルが低い患者では回復パターンの個人差が大きいことを反映していると考えられる。
80歳以上で認められた軽度の固定誤差(1.6点)は,高齢患者において予測値が実測値をやや下回る,すなわち実際の退棟時FIM運動項目合計点が予測よりも高くなる傾向を示している。これは本モデルが高齢患者のリハビリテーションによる改善を若干過小評価している可能性を示唆する。しかし,この誤差はFIM運動項目合計点の臨床的に意味のある最小変化量として報告されている17点21)と比較すると極めて軽微であり,95%一致限界(−8.4~11.5点)も同様に基準を下回っていた。実績指数の予測においては保守的な推定となるため臨床的な許容範囲内といえる。臨床的には,入棟時FIMが低い重症患者では,予測値を参考にしつつも個別の経過観察と目標の再設定がより重要であることを示唆している。
本研究の臨床的意義について考察する。回復期リハビリテーション病棟では80歳以上の患者を実績指数の算出から除外可能であるが,高齢化により除外しきれない状況が生じている。本モデルは80歳以上の患者にも適用可能であり,以下の場面での活用が期待される。第一に,入棟時に退棟時のFIMを予測することで,FIM利得の見込みが立ち,実績指数の試算が可能となる。これにより,リハビリテーション計画の立案や退棟時期の調整など,病棟運営の計画立案に活用できる。第二に,予測されるFIMを目標値として設定し,リハビリテーションの進捗を評価する指標として活用できる。第三に,予測値と実際の経過を比較することで,予測を上回る改善が得られた患者や予測を下回る患者を早期に同定し,治療方針の見直しに活用できる。
本研究の限界として,以下が挙げられる。第一に,単施設のデータを用いた検討であり,他施設での外的妥当性の検証が必要である。施設ごとにリハビリテーションの提供体制や患者特性が異なるため外的検証が求められる。第二に,脳画像所見や併存疾患の詳細など,予後に影響する因子を含めていない。これらの因子を加えることで予測精度がさらに向上する可能性がある。第三に,本研究は後方視的研究であり,予測モデルの臨床実装による効果は検証されていない。第四に,発症から入棟までの日数や入院日数は患者ごとに異なっており,発症から一定期間後の時点での予測ではない。ただし,これは実臨床の状況を反映しており,本モデルの臨床応用においては現実的な条件といえる。
今後は本モデルを実装したウェブアプリケーションを開発し,リハビリテーション計画の立案や実績指数の早期予測への活用ができると考える。
回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の退棟時FIM運動項目合計点を,入棟時の基本情報とFIMからランダムフォレスト法により高精度で予測可能であった。予測に最も寄与する因子は入棟時FIM合計点と運動項目合計点であり,下位項目ではトイレ動作,整容,排便管理の重要度が高かった。本モデルは80歳以上の高齢患者にも適用可能であるが,機能レベルが低い患者では予測精度がやや低下するため留意が必要である。
本研究は,公益財団法人秋山記念生命科学振興財団および公益財団法人ノーステック財団の助成を受けて実施した。
本研究に関連して開示すべき利益相反はない。