理学療法学
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研究論文(原著)
腰椎術後患者に対する神経系モビライゼーションの効果検討
—ランダム化比較試験—
二瓶 好人 大石 敦史佐東 慎吾平尾 利行来間 弘展
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2026 年 53 巻 4 号 p. 247-255

詳細
要旨

【目的】本研究の目的は腰椎椎弓形成術および腰椎椎体間固定術後患者に神経系モビライゼーション(Neural Mobilization:以下,NM)を実施した際の身体機能への影響を明らかにすることとした。【方法】腰椎椎弓形成術または腰椎椎体間固定術を行った患者を対象に,NM群と対照群にランダム割付をした。NM群には通常リハビリテーションに加え頚椎他動屈曲運動(Passive Neck Flexion Exercise:以下,PNFE)を術後翌日より行い,術後1カ月時点まで追跡した。主要アウトカムをOswestry Disability Index(以下,ODI)とし,共分散分析にて群間比較を行った。【結果】ODIはNM群で有意な改善を認めた(回帰係数=−12, 95%信頼区間[−20~−4], p=0.003)。【結論】腰椎術後患者に対し,PNFEを用いたNMは,身体機能の改善に有効である可能性が示唆された。

Abstract

Objective: To clarify the effects of postoperative neural mobilization (NM) on the physical function of patients who have undergone lumbar spine surgery.

Methods: We enrolled 36 patients with lumbar spinal stenosis or degenerative spondylolisthesis who underwent decompression or fusion surgery (NM group, n=20; control group, n=16). Both groups underwent conventional rehabilitation starting on postoperative day one. Additionally, the NM group undertook therapist-assisted and self-performed passive neck flexion exercise (PNFE), which was initiated at a frequency of 60 repetitions and increased to 150 repetitions daily from the second day until discharge. The primary outcome was the Oswestry Disability Index (ODI) score at 1 month postoperatively, which was analyzed using the analysis of covariance. Secondary outcomes included the pain and numbness intensity, Japanese Orthopedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire (JOABPEQ) score, and Straight Leg Raise (SLR) test.

Results: Compared with the control group, the NM group demonstrated significantly greater ODI improvement (regression coefficient: −12, 95% confidence interval [−20 to −4], p=0.003). Secondary outcomes, including Visual Analog Scale scores for pain and numbness, JOABPEQ scores, and SLR angles, improved in both groups over time albeit without significant between-group differences.

Conclusion: Postoperative PNFE-based NM intervention is a feasible rehabilitative option that effectively improves physical function in patients after lumbar spine surgery.

はじめに

腰部脊柱管狭窄症(Lumbar Spinal Stenosis:以下,LSS)は脊柱管の狭小化により,神経根や脊髄が圧迫され,腰下肢痛や痺れを引き起こす変性疾患である1。LSSの治療法に手術療法があり,本邦では年間約20万人が脊椎手術を受けている2。手術療法は除痛効果があり費用対効果に優れた治療法である3。しかし術後に術前の疼痛や神経症状が持続,あるいは新たに発症するFailed Back Surgery Syndrome(以下,FBSS)があり4,本邦での発生率は20.6%である5。FBSSの原因の一つとして硬膜外線維症があり,FBSS全体の20~36%に発生する4。硬膜外線維症は硬膜外腔に生じる血腫による瘢痕組織が神経根を癒着させ,疼痛や神経症状を引き起こす6。FBSSは医療費の増大を引き起こし7,生活の質の低下につながるため4,FBSSを予防する方策が必要である。硬膜外線維症は神経根の機械的圧迫を強めるため8,神経系を早期から動かし硬膜外線維症を予防することは疼痛や神経症状を減らし,費用対効果や患者満足度向上につながると考える。

神経系モビライゼーション(Neural Mobilization:以下,NM)は,徒手的手技や運動によって神経構造とその周囲組織間の動きを促し,神経内浮腫を軽減する効果がある9。NMの方法として下肢伸展挙上(Straight Leg Raising:以下,SLR)や頚椎他動屈曲(Passive Neck Flexion:以下,PNF)があり10,これらは神経系の検査やNMとして使用されている1011。特に腰部疾患では下肢を動かした際の神経偏位量が低下していることが報告されている1214。生体研究においてPNF時に下肢の末梢神経の偏位は認められないと報告されているが1516,一方で,屍体研究では頚椎屈曲により脊髄が頭側へ偏位することが示されている17。これらの報告から,PNFは末梢神経への直接的な大きな偏位を生じさせずに,脊髄および神経根を含む神経系に対して偏位を生じさせられる可能性があると考えられる。神経偏位量が低下した状態では,SLRのように下肢を動かすNMと比較して,PNFによる頭側から神経系に偏位を生じさせるアプローチは,術後急性期において疼痛を増悪させず神経の瘢痕化を予防できる可能性がある。

NMを腰椎術後患者に実施した報告は散見されるが,下肢を動かすNMを中心に行っている報告1820や,PNFを行っていても実施回数が少ない報告11に限られている。本研究の目的はPNFを用いたNMが,身体機能にどのような影響を与えるのかを検討することである。NMを行った群は,通常のリハビリテーションを行った群に比べて術後1カ月時点でOswestry Disability Index(以下,ODI)が有意な改善を示すと予想した。

対象および方法

1. 対象

本研究は術式と罹患期間にて層別化したランダム化比較試験とした。対象は船橋整形外科病院(以下,当院)を受診し,2024年6~11月に腰椎椎弓形成術もしくは腰椎椎体間固定術を行った患者とした。適格基準は① LSSもしくは腰椎変性すべり症を原疾患とする者,② 50歳以上の者,③当院関連クリニックに術後通院しフォローアップが可能であった者とした。除外基準は①頚胸椎疾患の既往歴がある者,②頚椎を動かすことができない者,③術前に馬尾神経症状がある者,④術前の障害分節筋の徒手筋力テストが3未満の者とした。通常のリハビリテーションおよびNMを行うNM群と,通常のリハビリテーションのみを行う対照群に,手術が確定し同意取得後(手術前日)にランダム割付を行った。割付は,Microsoft Excelで発生させた乱数にて行った。0~1の乱数を生成し,0.5以上であれば「NM群→対照群」,0.5未満であれば「対照群→NM群」の順で割付した(ブロックサイズ:2)。術式により入院期間が異なること,また罹患期間が6カ月以上となるとODIの改善率が低下すると報告されているため21,層別因子とした。層別因子の組み合わせは「腰椎椎弓形成術・6カ月未満」,「腰椎椎弓形成術・6カ月以上」,「腰椎椎体間固定術・6カ月未満」,「腰椎椎体間固定術・6カ月以上」とした。研究登録と割付は第一著者のみで行った。割付の隠蔽は行われなかった。サンプルサイズの計算はG*Power 3.1(Heinrich-Heine-University, Free software)を用い,先行研究を基に効果量をd=0.77と設定した20。第一種過誤率(α)を0.05,検出力(1-β)を0.80とし,必要な総サンプルサイズは32名と算出された。登録期間中に143名をスクリーニングし,除外基準に該当した100名を除外した。適格基準を満たした43名をランダム化し,NM群22名,対照群21名に割付した。

本研究は,医療法人社団紺整会船橋整形外科病院倫理委員会の承認(受付番号:2024046)と,東京都立大学荒川キャンパス研究倫理委員会の研究実施許可(許可番号:24803)を得て行った。またヘルシンキ宣言に則り,対象者に同意を得て実施した。本研究は対象者に対して介入内容を明示しない単盲検で実施した。対象者には神経系を動かす介入と,そうではない介入のいずれかを術後に行うことを説明し,術後はどちらの介入を行っているかは対象者には明示しなかった。さらに,UMIN-CTRに登録し研究を行った(試験ID:UMIN 000054350)。本研究は,Consolidated Standards of Reporting Trials(CONSORT)2010 statementに準拠して実施した。

2. 介入方法

両群ともにリハビリテーション介入を術後1日目より開始した。NM群には頚椎他動屈曲運動(Passive Neck Flexion Exercise:以下,PNFE)を追加で実施した(図1)。PNFEは理学療法士が行う介入とセルフエクササイズの2つを行った。PNFEは背臥位で実施し,股関節および膝関節を軽度屈曲位とした。理学療法士が対象者の頭部を把持し,抵抗感を感じるところまで頚椎を他動屈曲させた。セルフエクササイズでは後頭部を対象者自身の手で把持させ,抵抗感を感じるところまで頚椎を他動屈曲するように指示した。PNFEは疼痛が生じない範囲で行うように説明した。介入およびセルフエクササイズは対象者が不快感を生じない速度で頚椎屈曲動作を行い,抵抗感を認めた時点で速やかに頚椎中間位へ戻した。神経症状や疼痛の増悪が認められた場合は介入を中止した。術後1日目と退院日は60分間のリハビリテーションを1回行い,術後2日目から退院前日までは,60分間のリハビリテーションを1日2回ずつ実施した。介入内容と回数は図2のとおりで実施した。PNFEの実施回数は,理学療法士による介入とセルフエクササイズを合わせて,術後1日目は合計60回,術後2日目以降は合計150回となるように設定した(図2)。介入は臨床経験6年以上の理学療法士4名で行った。術後1日目より,運動チェックリストを対象者に配布しセルフエクササイズの実施率を確認した。退院後は関連施設に通院し,外来リハビリテーションとセルフエクササイズを行うように指導した。術後1カ月時点で当院関連施設に来院した際に,運動チェックリストを回収し運動実施率を確認した。運動実施率は,(各対象者が実施できた回数/実施すべき総回数)×100で算出した。NM群では通常リハビリテーションに加えてPNFEを含む全項目を,対照群では通常リハビリテーション項目のみを実施率計算の対象とした。

図1 Passive Neck Flexion Exercise (PNFE)

a. 理学療法士が行う介入:理学療法士が対象者の頭部を把持し,最初に抵抗感を感じるところまで頚椎を他動屈曲した.疼痛が生じない範囲で実施した.b. セルフエクササイズ:対象者自身に頭部を両手で把持させ,最初に抵抗感を感じるところまで頚椎を他動屈曲させた.疼痛が生じない範囲で実施させた.

図2 介入内容

PNFE: Passive Neck Flexion Exercise. ※ NM群のみ実施.両群ともに術後1日目より介入を開始した.NM群にはPNFEを追加で実施した.上記介入を術後1日目と退院日は1日1回,術後2日目から退院日前日までは1日2回実施した.

3. 評価項目

評価項目と評価時期を表1に示した。評価時期は評価項目の特性に応じて設定した。ODIおよびJapanese Orthopedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire(以下,JOABPEQ)は日常生活動作や社会生活機能を評価する質問票であり,入院期間中は実際の生活環境に即した評価が困難であると判断したため,術前および術後1カ月時点で評価した。一方,SLRは術後1カ月時点では関連外来施設での測定となり,同一測定者による評価が困難であったため,信頼性を担保できないと判断し,術前および退院時のみ評価した。

表1 評価項目と評価時期

術前退院時術後1カ月
ODI
腰痛,下肢痛,痺れVAS
JOABPEQ
SLR

「術前」は手術前日に評価を行った.

ODI: Oswestry Disability Index, VAS: Visual Analog Scale, JOABPEQ: Japanese Orthopedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire, SLR: Straight Leg Raising.

1)主要アウトカム

主要アウトカムはODIとした。ODIは世界で最も使用されている腰痛患者に対する患者立脚型の特異的な質問票の1つであり,多くの腰椎疾患患者や腰椎術後患者の身体機能の評価として使用されている22。日本語版ODIは高い信頼性(内部整合性:Cronbach’s α:0.83,テスト–再テスト信頼性:0.93)が報告されている23。1)疼痛,2)身の回りのこと,3)物の持ち上げ,4)歩行,5)座位,6)立位,7)睡眠,8)性生活,9)社会生活,10)乗り物での移動の10項目からなる。ODIの得点は,性生活以外の9項目(各項目0~5点)の合計得点を満点の45点で除し,百分率(%)で算出した。スコアが高いほど機能障害が重度であることを示す。

2)副次的アウトカム

副次アウトカムはVisual Analog Scale(以下,VAS),SLR, JOABPEQとした。

VASは疼痛評価であり,100 mmの直線上で該当する疼痛の位置に線を引かせた。VASでの評価項目は腰痛,下肢痛,痺れの程度とした。術前日と術後1カ月時点の評価は,評価日1週間前より疼痛・痺れが最も強かった時の状態で記載をさせた。退院時の評価は,退院時点で感じている平均的な疼痛の度合いで記載するように指示した。

SLRは神経系の伸張性を評価する検査である24。背臥位で他動的に下肢を挙上し,検者が最初に抵抗感を感じた角度を,電子角度計(伊藤超短波株式会社,Easy angle)にて計測した。

JOABPEQは腰椎疾患特異的な質問票であり,疼痛関連,腰椎機能,歩行機能,社会生活,心理的障害の5つの領域に分かれた25項目の質問により構成されている。各領域の点数は0~100の範囲で算出され,点数が高いほど良好な状態を示す25

4. 統計解析

術前のベースライン特性については,連続変数の正規性を確認し,正規分布に従う場合は対応のないt検定,正規分布に従わない場合はMann–WhitneyのU検定を用いて群間比較を行った。カテゴリカル変数については,Fisherの正確確率検定を用いて群間比較を行った。ODI, SLR, JOABPEQは術前値と,層別因子である術式と罹患期間を共変量とした,共分散分析(Analysis of Covariance:以下,ANCOVA)を実施し,群間の差を評価した。また執刀医6名で投薬の傾向が異なるため,執刀医を共変量に加えたANCOVAを感度解析として追加で実施した。副次的アウトカムであるVASは,群(NM群,対照群)と時期(術前,退院時,術後1カ月時点)の2要因混合モデル反復測定二元配置分散分析を実施した。有意差を認めた項目に対しては,Bonferroni補正による多重比較を行った。本研究の主要解析は,術後1カ月時点でODIが取得できた症例を対象としたcomplete-case解析とした。統計解析にはEZR version 4.4.3(自治医科大学附属さいたま医療センター)26を使用し,有意水準はp<0.05とした。

結果

ランダム化割付した後, NM群1名, 対照群1名は術後の筋力低下により再手術となり, 研究介入開始前であったため割付けられた介入を受けなかった。介入後, 術後1カ月時点でODIが取得できず追跡不能となった症例はNM群1名, 対照群4名であった。 最終的に術後1カ月時点にODIが取得できたNM群20名, 対照群16名を解析対象とした(図3)。基本属性を表2に示した。

図3 研究のフローチャート

術後1カ月時点でODIが取得できた症例を解析対象とした.

表2 対象者の基本属性

NM群対照群p値
性別男/女(名)3)11/99/71.0
年齢(歳)1, 4)71 (54~81)70 (56~82)0.70
身長(cm)2, 4)161 (11)163 (9)0.72
体重(kg)2, 4)64 (12)63 (12)0.89
術式椎弓形成術/固定術(名)3)10/1011/50.32
執刀医A/B/C/D/E/F(名)3)2/3/7/2/3/32/3/6/4/0/10.59
手術椎体数2, 5)2 (1)2 (1)0.86
罹患期間6カ月未満/以上(名)3)5/154/121.0
入院期間(日)2, 5)7 (2)7 (3)0.80
外来リハビリテーション回数(回)2, 5)3 (1)3 (1)0.75
運動実施率(%)2, 5)84.5 (19.3)77.2 (38.7)0.60
ODI2, 4)36 (11)32 (12)0.28
腰痛VAS2, 5)53 (21)45 (31)0.63
下肢痛VAS2, 4)65 (16)64 (26)0.86
痺れVAS2, 5)56 (30)53 (31)0.75
右SLR2, 4)59 (12)63 (14)0.33
左SLR2, 4)62 (11)65 (15)0.51
JOABPEQ疼痛関連2, 4)53 (34)66 (32)0.24
JOABPEQ腰椎機能2, 4)66 (24)67 (19)0.90
JOABPEQ歩行機能2, 4)35 (28)26 (23)0.32
JOABPEQ社会生活2, 4)45 (20)45 (19)0.99
JOABPEQ心理的障害2, 4)54 (14)51 (12)0.49

1)平均値(最小値~最大値),2)平均値(標準偏差),3) Fisherの正確確率検定,4)対応のないt-検定,5) Mann–WhitneyのU検定.NM: Neural Mobilization, ODI: Oswestry Disability Index, VAS: Visual Analog Scale, SLR: Straight Leg Raising, JOABPEQ: Japanese Orthopedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire.

ANCOVAの結果,ODIはNM群で有意な改善を示した(回帰係数=−12, 95%信頼区間[−20~−4],p=0.003)(表3)。ODIの各項目別の数値は表4にまとめた。執刀医を共変量に加えたANCOVAの結果,ODIはNM群で有意な改善を示した。

表3 ODI, JOABPEQ, SLRの術前および術後1カ月の群間比較(ANCOVA)

NM群 平均値(SD)対照群 平均値(SD)最小二乗平均値の差(95%CI)p値
ODI
術前36 (11)32 (12)
術後1カ月14 (11)21 (17)−12 (−20~−4)0.003*
JOABPEQ疼痛関連
術前53 (34)66 (32)
術後1カ月83 (27)84 (22)2 (−16~20)0.81
JOABPEQ腰椎機能
術前66 (24)67 (19)
術後1カ月75 (22)76 (16)1 (−12~14)0.89
JOABPEQ歩行機能
術前35 (28)26 (23)
術後1カ月69 (22)67 (30)1 (−17~18)0.92
JOABPEQ社会生活
術前45 (20)45 (19)
術後1カ月66 (19)64 (22)2 (−13~17)0.76
JOABPEQ心理的障害
術前54 (14)51 (12)
術後1カ月67 (11)70 (16)−4 (−13~5)0.34
右SLR
術前59 (12)63 (14)
退院時62 (12)60 (14)5 (−4~13)0.27
左SLR
術前62 (11)65 (15)
退院時60 (12)59 (15)2 (−7~11)0.66

*: p<0.05. 術前値,罹患期間,術式を共変量として投入した.

ODI: Oswestry Disability Index, JOABPEQ: Japanese Orthopedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire, SLR: Straight Leg Raising, ANCOVA: Analysis of covariance, NM: Neural Mobilization, SD: Standard Deviation, CI: Confidence Interval.

 

表4 ODIの項目別の数値

NM群対照群
術前術後1カ月術前術後1カ月
1. 疼痛2.2 (0.8)0.7 (0.6)1.8 (1.2)1.3 (1.0)
2. 身の回りのこと1.3 (0.7)0.4 (0.6)1.1 (0.7)0.9 (0.8)
3. 物の持ち上げ1.5 (0.9)1.2 (1.2)1.0 (0.8)1.6 (1.5)
4. 歩行2.2 (1.0)0.6 (0.9)1.8 (1.0)1.4 (1.2)
5. 座位1.3 (0.8)0.8 (0.7)0.9 (1.0)1.0 (1.1)
6. 立位2.9 (1.2)0.6 (0.7)2.3 (1.1)1.5 (1.6)
7. 睡眠0.8 (1.3)0.1 (0.3)0.7 (1.3)0.3 (0.8)
9. 社会生活2.2 (1.0)1.0 (1.0)1.8 (1.2)1.3 (1.1)
10. 乗り物での移動1.5 (1.1)0.6 (1.1)1.2 (0.9)0.8 (1.1)

平均値(標準偏差).「8. 性生活」は除外した.

ODI: Oswestry Disability Index, NM: Neural Mobilization.

JOABPEQは各項目において,NM群と対照群の間で術術後1カ月時点の有意差は認められなかった(表3)。

右SLRおよび左SLRにおいて,NM群と対照群の間で退院時の有意差は認められなかった(表3)。

VASの混合モデルを用いた反復測定二元配置分散分析の結果,腰痛,下肢痛,痺れVASにおいて時期の主効果を認めた(表5)。事後比較の結果,腰痛,下肢痛,痺れVASが両群ともに術前に比べて,退院時,術後1カ月時点で有意な改善を認めた(表6)。

表5 VASの混合モデルを用いた反復測定二元配置分散分析の結果

NM群 
平均値(SD)
対照群 
平均値(SD)
群の主効果時期の主効果交互作用
腰痛VAS
(mm)
術前53 (21)45 (31)0.59<0.001*0.45
退院時17 (18)16 (16)
術後1カ月11 (12)13 (18)
下肢痛VAS
(mm)
術前65 (16)64 (26)0.30<0.001*0.48
退院時15 (21)18 (24)
術後1カ月10 (14)21 (28)
痺れVAS
(mm)
術前56 (30)53 (31)0.49<0.001*0.46
退院時7 (12)16 (27)
術後1カ月10 (19)16 (23)

*: p<0.05.

VAS: Visual Analog Scale, NM: Neural Mobilization, SD: Standard Deviation.

 

表6 時期の主効果に対する事後比較(Bonferroni補正)

差の平均値95% CIp値
腰痛VAS
(mm)
術前vs退院時3322~43<0.001*
術前vs術後1カ月時点3726~48<0.001*
退院時vs術後1カ月時点4−6~150.96
下肢痛VAS
(mm)
術前vs退院時4835~60<0.001*
術前vs術後1カ月時点4936~62<0.001*
退院時vs術後1カ月時点1−12~141.00
痺れVAS
(mm)
術前vs退院時4331~55<0.001*
術前vs術後1カ月時点4129~54<0.001*
退院時vs術後1カ月時点−1−14~111.00

*: p<0.05.

VAS: Visual Analog Scale, CI: Confidence Interval.

副次的アウトカムの検出力はすべて低値であった。

考察

本研究ではNM群が対照群に比べて,術後1カ月時点においてODIの有意な改善を示した。LSSにおけるODIのMinimal Clinically Important Difference は10.5であると報告されており27,本研究のNM群における改善度はこの基準を満たすものであった。

ScrimshawらはNMを術翌日より6~10回,1日2回行った結果,術後6週間で両群ともにVAS, SLRが改善したが,通常リハビリテーション群と比べて有意差を認めなかったと報告している11。またReyesらは,腰椎椎間板摘出術後3~4週よりNMを週2~3回実施したが,ODIに有意差は認められなかったと報告している19。これらの研究ではNMの実施回数が少ないこと,下肢のNMを中心に実施している点が本研究とは異なっている。

ODIの各項目を確認すると,NM群では術後1カ月で疼痛の項目が改善する傾向にあった。NMの効果として,疼痛誘発物質の軽減28や,神経内浮腫軽減が報告されている29。本研究結果からNMにより神経内浮腫を抑制し,疼痛を軽減することで,日常生活動作が容易になった可能性がある。

NMの方法には神経を滑走させるスライダーと神経を伸張させるテンショナーがある29。スライダーは,隣接関節において神経床の長さを増加させる運動と減少させる運動を同時に行うことで,神経のひずみの増加を抑えて神経の長軸方向の滑走を生じさせる手技である29。一方,テンショナーは,関節運動により神経床を延長させることで神経のひずみを増加させる手技である29。Breigらは頚椎屈曲により脊髄に生じた張力が胸腰椎部へ伝達され,腰仙神経根を伸張することを報告している30。このことからPNFEは神経系に張力変化を生じさせるテンショナーに近い特性を有する可能性がある。

下肢を用いたスライダーは下肢の末梢神経を偏位させることは可能であるが31,神経根レベルでは偏位しないと報告されている32。また腰部疾患患者では下肢を動かした際の神経偏位量が低下していることが報告されている1214。加えて,腰椎術後では炎症反応により神経根やその周囲組織に浮腫や瘢痕化が生じ,これが疼痛や機能制限の要因となる33。このため,術部周囲の神経根やその周囲組織に生じた浮腫を軽減することが重要である。しかし,下肢を用いたNMでは術部周囲の脊髄・神経根レベルに十分な偏位を生じさせにくく,神経内浮腫の軽減効果は限定的である可能性がある。一方,Reidは頚椎屈曲を行うと第12胸髄は頭側に平均0.8 mm偏位したと報告しており17,PNFEは頭側から術部周囲の脊髄および神経根を含む神経系に対して,軽微な偏位を生じさせる可能性があると考える。著者の臨床経験上も頚椎屈曲動作は,術後患者において疼痛の誘発が少ない傾向にあるため,本研究ではPNFEを行うことで,疼痛増悪を最小限に抑えつつNMの効果を引き出せたものと推察する。

SLRは坐骨神経の伸張性を評価する検査であるが24,本研究で実施したPNFEは下肢末梢神経を直接偏位させる介入ではない。そのため,神経系に変化が生じていたとしても,SLR角度の変化としては検出されなかった可能性がある。

本研究では腰痛,下肢痛,痺れVASは両群ともに術前に比べ,退院時と術後1カ月時点で有意な改善を示したが,群間では差がなかった。しかし下肢痛VASと痺れVASは術後1カ月時点ではNM群で低下傾向であった。先行研究では下肢痛がある腰部疾患患者にNMを行うと下肢痛が軽減したと報告されている3435。そのため,NMは腰痛の改善には関与しない可能性がある。一方で下肢痛や痺れの改善には効果を示した可能性があるが,検出力が低値であった。またJOABPEQの質問項目は腰痛に関する質問項目が多いため,NMによる効果が得られず群間差を生じなかったと考える。

本研究の限界として投薬の統一が完全になされていない点が挙げられる。執刀医によって投薬の傾向が異なるため,共変量として投入しANCOVAを行ったが,完全な統一はできていない。また,本研究ではNMを比較的高頻度で実施したが,この介入回数が最適であったかは明らかではない。さらに,NMの実施開始時期についても,術後早期から実施することが有効であるのか,あるいは他の開始時期がより適切であるのかについては明らかではない。加えて,本研究ではPNFE時の神経系の偏位を直接測定していないため,実際に神経偏位が生じていたかどうかは確認できていない。また今回は術後1カ月時点までのフォローアップであったため,長期的な結果は不明である。さらに一施設での検討のため他施設に汎用できるかを確かめるために,多施設での検討が必要である。

結論

腰椎椎弓形成術または椎体間固定術を行った患者を対象に,PNFEを用いたNMを実施したNM群と通常リハビリテーションのみを実施した対照群を比較した。NM群では術後1カ月時点でODIが有意な改善を示した(回帰係数=−12, 95%信頼区間[−20~−4],p=0.003)。腰椎術後患者に対するNMは身体機能改善を促す可能性が示唆され,腰椎術後リハビリテーションにおける有効な選択肢となりうる可能性がある。

謝辞

本研究にご協力いただいた患者様,船橋整形外科病院,船橋整形クリニック,西船クリニック,市川クリニックの職員の皆様に感謝申し上げる。

助成

研究助成金等の資金的支援は受けていない。

利益相反

開示すべき利益相反はない。

文献
 
© 2026 日本理学療法学会連合

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