論文ID: 11687
【目的】随意運動機能と歩行能力に乖離がみられた前頭葉内側面損傷例に対し,本現象の背景に運動開始困難例があると推察し外的刺激を用いたアプローチを試み,症状の改善を認め屋内歩行自立を獲得したため報告する。【対象】右前大脳動脈閉塞により左下肢の随意運動が著しく困難となったものの,移乗動作や歩行時には明らかな支持性の低下がみられなかった70 歳代の女性である。【方法】視覚情報や聴覚情報を活用した外的刺激を用いた理学療法を実施した。【結果】外的刺激の提供によって運動開始困難には改善がみられ,各種起居動作時の随意運動障害は改善し,歩行時の運動開始困難の改善が図れ,退院時には屋内歩行自立までに至った。【結論】前頭葉内側面損傷後に随意運動機能と歩行能力に乖離が生じた症例に対して,外的刺激を用いた理学療法を実践することは,運動機能を改善させるうえで有効な一治療手段となる可能性があるものと思われた。