論文ID: 11800
【目的】多巣性後天性脱髄性感覚運動型慢性炎症性脱髄性多発神経炎(以下,MADSAM)により感覚性運動失調を呈した症例に対する,バランスおよび歩行機能改善に向けた理学療法経過を報告する。【対象と方法】症例は40 歳台の女性である。入院時は自立歩行が困難であったが,下肢の運動神経脱髄所見は軽度であり,筋活動に伴う固有受容感覚を重視した体性感覚フィードバックが有効と考え,動作課題を中心とした運動療法を立案した。下肢の活動誘発性脱力に留意し,CR–10 を用いて負荷量の設定を行った。【結果】およそ3 ヵ月後,感覚障害に変化はなかったが,立位バランスと歩行機能の改善を認め,自宅へ退院となった。【結論】感覚性運動失調を呈するMADSAM 患者への理学療法では,姿勢制御にかかわる複数の感覚モダリティに着目した運動療法と,CR–10 に基づいた負荷量や頻度の調整が有効であると考えられた。