2023 年 20 巻 p. 85-100
近年、中小企業の国際化が進むに伴い、関連する研究が蓄積されている。しかしながら、2010年以降の先行研究をレビューし、現在の到達点と今後の課題について論じたものは少ない。
そこで、本稿では、2010年以降に公表された日本中小企業の国際化に関する先行研究を中心にレビューを行い、中小企業の国際化研究の現状と課題を示すことを試みた。その結果、以下の2点を明らかにした。
第一に、中小企業の海外進出に着目した研究をみると、研究の焦点が変化している。具体的には、①海外市場開拓、②非製造業、③急進的な国際化(ボーングローバル企業)、④越境ECやトランスナショナル創業などの多様な進出形態に着目した研究がみられる。
第二に、中小企業における海外進出後に着目した研究をみても、研究の焦点が変化している。具体的には、①海外子会社における販売などの新たな機能の獲得、②外国人人材の活用など、海外子会社のマネジメント、③日本国内拠点にプラスの影響を及ぼすルートの解明に着目した研究がみられる。
2010年以降、中小企業の国際化は大きく変化している。中小企業の海外進出および海外進出後の変化について、引き続きさらなる深堀が必要と考える。