イノベーション・マネジメント
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査読付き投稿論文
企業合併・統合を通じた製品イノベーションと企業成長に関する一考察
―王子ホールディングスによる共創的製品開発と事業転換―
石﨑 啓太
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2025 年 22 巻 p. 219-235

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抄録

本稿の目的は、企業合併・統合後における、製品イノベーションを促進し、成長につながる企業再編に関する示唆を得ることである。企業は合理化の過程で検索範囲を限定させることにより、製品イノベーションの機会が低下する。しかし、企業合併・統合によって検索範囲を拡大することは、持続的競争優位性を高める有効な手段である。一方で、経営統合に関する調整コストの増加が阻害要因となる。そこで、本稿のリサーチクエスチョンを「同業種間での企業合併・統合を実施した垂直統合企業が、効率的に外部知識を導入し、製品イノベーションによる企業成長を促すには、どのような企業再編があるのだろうか」と設定し、王子ホールディングスの事例分析を行った。

分析の結果、以下の示唆を得た。異なる出身企業の人材が「混ざり合う」組織体制を構築することで、合併企業および被合併企業の強みを活用した共創的な製品開発が行われ、製品イノベーションが促進される。また、川上と川下のバリューチェーンを伸ばし、それぞれで顧客に製品やサービスを提供する企業再編により、外部知識の導入が促進される。同時に、同一資源を活用したバリューチェーンを構築することで、社内のベクトルの一体化が進む。これらの手法を組み合わせることで、調整コストを低減しつつ、価値獲得と価値創造を通じた持続的競争優位性が高まる。

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© 2025 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
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