2025 年 22 巻 p. 327-347
本稿の目的は、資本主義経済では当たり前とされてきた経済成長を基軸とする生活の豊かさ実現パラダイムはすでに不適合状態にあるため、それに代わる新たな基軸パラダイムの特定とその体現手段を明らかにし、その手段の企業活動のあり方や社会的存在価値向上に対する効果を解明することにある。分析の結果、経済成長の基軸機能は、経済成長の3要素が、資本ストックは過剰、労働人口は低下、技術進歩もその動力源の物質的欲望の拡張限界からプラス成長が望めないためすでに不全状態にあること、新たな基軸は、我々が「共豊潤縁(Co-Flourishing Relationality)」と呼ぶ「自己が他者や自然と互いに豊潤となるつながり」にあることを見出した。さらに、「共豊潤縁」の醸成・拡大・多様化は、公富(public wealth)創造の基盤であるCo-Innovationコモンズ・エコシステムによって実現しうること、企業のCo-Innovationコモンズへの参画は、公富創造の貢献を通じた企業の社会的存在価値の上昇と、企業利益重視の経営では得られない、技術、経営、感性の3成分のイノベーション創発を体現し、かつ創発手段をエンクロージャーから共有資源(使用価値)の共創へ転換しうることを理論的に明らかにした。