抄録
本研究の目的は,低摩擦床面において歩行開始1歩目の動作がどのようにコントロールされているかを明らかにすることである。対象は,9名の健常者であった(年齢:22.6±3.0歳)。高摩擦床面と低摩擦床面において歩行開始1歩目の動作を,1枚のフォースプレートと動作解析システムを用いて測定した。その結果,1歩目の歩幅と遊脚肢の踵接地時から足底接地時までの時間差は,低摩擦床面では高摩擦床面の場合よりも有意に減少し,遊脚肢の外果と床面との最大垂直距離は低摩擦床面では高摩擦床面の場合よりも有意に増加していた。これらの知見から,低摩擦床面における歩行開始1歩目の動作は,歩幅を減少させ,足部を高く上げ,踵接地時はフットフラットになるようにコントロールされることが示唆される。