2005 年 20 巻 2 号 p. 133-138
本研究の目的は,造血幹細胞移植患者の無菌室治療期間中における廃用症候群へ対する理学療法の効果を検討したものである。対象は,1年間に造血幹細胞移植を行った患者35名のうち,早期死亡を除いた18名であった。評価は,移植患者の握力・下肢伸展筋力・運動耐容能・Hb量・柔軟性について移植前後で行った。なお,移植患者は,毎日,無菌室において筋力増強練習やストレッチングを自主練習した。さらに,週3回,理学療法士と主に立位で,筋力増強練習とストレッチングを個別練習した。その結果,移植前と比べ移植後の筋力・運動耐容能・柔軟性の低下は顕著であった。Hb量は,移植前後であまり変化はなく,正常値と比較して低値を示した。今回,無菌室滞在中も理学療法を行ったにもかかわらず,移植前の筋力・運動耐容能・柔軟性を維持することができなかった。この原因としては,無菌室における活動性の制約が大きいと考えられた。この他,臨床的な観点から,薬物の副作用・血球の回復状況・栄養状態・治療関連症状等も考えられた。