抄録
心臓と肺は直結している臓器であるために,お互いが絶えず影響を及ぼしあっている。そのため,循環器疾患が原因で呼吸器に問題が生じた場合は,単に呼吸を介助しただけでは酸素化能などの呼吸器の問題は改善しない場合も多い。心疾患患者に対する呼吸理学療法は,病態を理解し,呼吸理学療法の限界を把握した上で臨床応用する必要がある。心臓外科手術後は早期離床が最も効果的な呼吸理学療法であり,インセンティブスパイロメータを使用した伝統的な呼吸練習の効果については否定されている。また,心不全患者や心臓外科手術後の患者は呼吸筋力の低下を認めるものの,呼吸筋力トレーニングが関連する諸指標にどのように影響するかが十分に明らかになっていない。そのため,心疾患患者に対する呼吸筋トレーニングについては効果や必要性について更なる研究が必要である。